2016/03/27

遺伝子組換え作物反対派との対話?

どこから仕入れた情報なのか定かでないが、2月の「知らないではもったいない!!!米を食べて治す・予防する研究が進んでいる」に続いて、今度は「遺伝子組換えの現状と未来を考える」というシンポジウムを聞いてきた。異色なのは第二部としてGM(genetically modified=遺伝子組換え)作物に反対の立場の人物に反対討論をさせているところ。

案内の冒頭では次のように現状が紹介されており、ここだけ読めば「GM作物を受け入れよう」にも見える。

73億人を超えた世界の人口は、毎年7千万人も増え続けています。この食糧生産手段の一つに、遺伝子組換え(GM)作物があり、その生産開始後わずか20年で、米国ではトウモロコシ生産の93%、大豆の94%を占め、世界28か国で栽培されています。日本は、世界一のGM作物の輸入大国

主催は市民キャビネット農都地域部会とあるが、はてどんな団体だろう? という詮索もろくにしないで申し込んだ。立場の異なる人物を呼んで同席させるというところが気に入ったから。

なお、主催者によるまとめも公表されており、講演者の資料も一部はすでに公開されている。

遺伝子組換えの現状と未来を考える

第一部の講演「遺伝子組換えの現状と未来を考える」は国立研究開発法人農業生物資源研究所(4月からは国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)田部井豊さん。品種改良の話から始めて駆け足で。これについていける人はどれだけいるだろうか。なお、配布された冊子のうち、「みんなで考えよう 遺伝子組換え農作物・食品」「食と農の未来を提案するバイオテクノロジー」「カイコってすごい虫!」はネット上に公開されている(「みんなで考えよう 遺伝子組換え農作物・食品」のp1とp9のグラフについては最新版が挟み込まれていた)

質疑応答・議論

第二部はアンケートを記入しながら聞き流していた(なんせ配布資料にホメオパシーがどうのこうのと書いてある)が、途中たまらず「4.第二部 コメンテータのご発言について、感じたこと、思ったことをお聞かせください」に「良いモンサントはオレンジの香り、悪いモンサントは牛が下痢をする」と書き込んだ(佐々木倫子『動物のお医者さん』に出てくるエピソードのパロディ)

その後の質疑応答にもややうんざりしたところで毎日新聞の小島記者登場。「あ、この人の話をこのあいだ聞いたな」と思ったものの何の会だったか思い出せず(上記「米を食べて治す・予防する研究が進んでいる」だった)、そのためご挨拶もせず。

懇親会には出たものの、席が固定かつテーブルが分割されてしまったため、講演者の話の続きは聞けなかった。こちらのテーブルもそれなりに盛り上がっていたが、「組換え作物に賛成な人って、自分では食べませんよね」みたいなことをいう人がいたのでモンサントの圃場見学をするとお土産に組換え大豆で作った納豆をもらえることをにこやかに披露。しかし福島県から多数の避難民が出ているようなことを言われたときには、つい声を荒らげ「今でも200万人住んでいますよ」と注意を促したが「会津の人は避難していませんね」となんか噛み合わない。用心してエタノールは入れていなかったが、さらに自重レベルを上げ、深くは追及しなかった。

アンケート

会場で提出したアンケートには以下のように記入した。

2.本イベントをどのようにお知りになりましたか(複数回答可)

Twitterかな?

3.第一部 講演について、感じたこと、思ったことをお聞かせください。

盛り沢山で駆け足なので消化不良の感。的を絞った方が良いような(聴衆を選別して)。←参加申し込みの時点でテストもといアンケートをするとか。

NPBTって何?

グルホシネートのLD50値が変(2.895と1000分の1になっている)。「静聴」ではなく「清聴」。

位取りカンマであるべきところが小数点になっている
4.第二部 コメンターターのご発言について、感じたこと、思ったことをお聞かせください。

セラリーニ! 「良いモンサントはオレンジの香り、悪いモンサントは牛が下痢をする」

フグ刺しが食べたくなった(けど電焼フグでがまん)

5.同第二部 登壇者お二人とフロアの質疑応答・議論をお聞きになって

「フォーカス」って通じます?

先天性異常で脅しをかけるのは感心しない。「GMのせいですか、放射能のせいですか」とは思いませんか。

食物の発がん性を気にしすぎないのは賢明。

耐性雑草は自然選択ではないの? ですよね! GM関係ない。

お、小島さん登場! Btが洗って落ちるならラウンドアップも落ちるでしょう。

6.興味を持った個別の内容と全体評価を教えてください。

全体評価:4

主催者へのメール

帰ってきてから、アンケートの控えを見直すと独り善がりで分かりにくいかもという懸念を持ったので、主催者へ補足のメールを送った。以下、その抜粋(実際に送ったメールはプレーンテキスト)

3.第一部 講演について
「的を絞った方が良いような(聴衆を選別して)」

聴衆がどこまで理解しているかが分からないと演者としても話しにくいと思います。しかも組換え作物の問題は分子生物学、農学、経済学、政治学、社会学...と広い分野にまたがっています。

アンケートには「参加申し込みの時点でテストもといアンケートを」と書きましたが、その他にもすぐに入手できて半日程度で読み終えられる書籍あるいは5ページ相当のウェブテキストとか30分程度で視聴できる動画を提示して「ここまでは理解されていることを前提に進めます」として、範囲を限定しないとTPPとグリホサートの毒性と組換えの是非がごちゃまぜになることに。

4.第二部 コメンターターのご発言について

皮肉ばかり書いて申し訳ありません。

「フグ刺しが食べたくなった」

一般的に食されているものを安田さんが「毒があるから避けるのが文明の知恵」みたいな言い方をされたものですから。

5.同第二部 質疑応答・議論について
「「フォーカス」って通じます?」

田部井さんが最初の質問者に向けて「(質問を)フォーカスして」とおっしゃっていましたが、市民向けでは使わない方が良いように感じました。

「先天性異常で脅しをかける」

胎児や子孫に影響があるかも、というのは訴求力がありますが、農薬も上乗せ放射線も組換え作物もない状態でも先天性異常を持って産まれる子、あるいは産まれることができない胎児は一定の割合で存在します。霊感商法と紙一重ですから慎重に扱うべき話題。

「GMのせいですか、放射能のせいですか」

異常の原因を安易に決め付けるべきではありません。被爆者の家庭に上肢欠損児が生まれ、原爆のせいでは?と思っていたら実はサリドマイドのせいであったという例もあります。もし原爆のせいと決めつけ、薬害の可能性検討を「隠蔽!」と排除していたらどうなっていたことやら。

「食物の発がん性を気にしすぎないのは賢明」

これは安田さんの回答に共感。

「Btが洗って落ちるならラウンドアップも落ちるでしょう。」

有機農業で使われるBtタンパク質は外用だから洗えば落ちるとおっしゃっていたが、それならラウンドアップも(展着剤を使うのはおそらくどちらも同じ)。

なお、アンケートの6.は質問の意味を解し兼ねました。

GM作物反対の人はもっぱら健康被害を理由にするけれど、被害は明確になっていないのにもかかわらず「被害が出ないように、出たらすぐ分かるようにしてGM作物を受け入れよう」という妥協を模索しない路線は先行き難しいだろう。

一方、GMO推進派も、慎重にやらないと百日の説法屁一つということもあるのを忘れないでほしい。

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2016/02/11

米を食べて、治す・予防する

フェイスブックで教えてもらった講演会「知らないではもったいない!!! 米を食べて、治す・予防する研究が進んでいる」(PDF)に行ってきた。

以前、石浦さんの講演を聞いたことがあるのだが、セロトニンレセプター(の数だったかタイプだったか)がその人の好奇心の強さと関係があるようだという話をしてから聴衆に、今はデータの集積中なのだが検査に協力してくれる人はいますかと問いかけ、手を挙げた人に「あなた方は好奇心の強い人だからサンプルとして偏ってしまう」というようなことを言われたのが記憶に残っている。

小島さんは去年BLOGOSに「非科学的な遺伝子組み換え作物論争に終止符を!」というインタビューが掲載されていた人。『誤解だらけの遺伝子組み換え作物』の編集人でもある。

第二部のバネル討論は盛り上がりを見せたけれど、終わってすぐに神保町にある和亭『なにわ』の創業40周年感謝フェアへ行って八海山に溺れてしまい、翌日はコピスみよしへ行ってまたワインビールに浸ってほとんど流れてしまったので、会場で書いたアンケートを清書するにとどめる。

アンケート回答

1)基調講演について
「スギ花粉症緩和米の臨床研究における効果」どちらとも言えない
「アルツハイマー病の予防」やや満足
「健康機能性米への期待」やや不満
「メディアの立場から」やや満足
2)具体的にどの点が

「スギ花粉症緩和米の臨床研究における効果」はペプチドの作用機構が理解できなかった。

「アルツハイマー病の予防」は挑発的で結構。もっとやれ。

「健康機能性米への期待」はもう少し落ち着いてしゃべってほしい。薬に近いものを素人判断で摂取できる食品として提供して大丈夫?

「メディアの立場から」改宗者の方が信仰心は篤い。信用できる。

3)遺伝子組換えイネ等を用いた機能性作物の開発についての期待感
 やや期待する
4)具体的に

○投与が簡単。生産手法が確立していて安価に供給可能。成分が安定。新しい薬草・生薬といえる。

△効きすぎる成分を入れたものが想定外の事態を引き起こし、反動が来ることを懸念。

5)遺伝子組換え技術について
 大いに期待する
6)(自由記述)

「知識を与えれば理解される」という欠如モデルは大人には当てはめられない。

不安をもっている人の中には事実を突きつけられると怒り出す人がいる。

あまり無知をバカにしない方が良い。バカにされて話を聞こうとするのは優等生くらい。とはいえNMRをMRIといいかえたのは不満。

「健康に良いもの」として提示すれば、考えの固まっている大人も受容する鴨。海外で普及させてから逆輸入という奇策も。←「人体実験」と非難される

補足

「不安をもっている人の中には事実を突きつけられると怒り出す人がいる」というのは、昨年「誤った情報を正すための3つのコミュニケーション術」という記事で話題になった。9月のICRPダイアログセミナーで東京大の早野教授が引用したのを聞いた人もいるだろう。上記記事は全文を読むには会員登録するか雑誌を定期購読する必要があるのだが、幸いなことに公開されている最初のページにこう書いてあるのが読める。

1979年にスタンフォード大学のチャールズ・ロードらが行った画期的な研究では、人間は事実に基づく科学的な証拠によって自説の間違いを示されると、ネガティブな反応を示すことが判明した。自分が持っている考えと一致する証拠だけを受け入れるこの現象を、ロードは「確証バイアス」と呼んだ。

これは先行研究で、本題はその次。

ダートマス大学のブレンダン・ナイハンとエクセター大学のジェイソン・ライフラーは、「バックファイア効果」というさらに危険な傾向を実証している。実験では、誤りを指摘された人々はその誤認をさらに強めたという(英語論文)。

端的に事実を指摘されただけでもこうである。もし、揶揄嘲笑とともに浴びせられたらどうなるだろうか? 権威ある専門家から理解できない難解な用語や数式を散りばめた反論を受け、衆人環視の下でぐうの音も出なかったら考えを改めるだろうか? どちらも期待できないし、たぶん復讐の炎は地獄のように我が心に燃えとなるであろう(これをマイクロアグレッシブだと感じた方は、自尊心ばかり無駄に強い男が勘違いで怒り狂う歌をご教示ください)

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2014/06/29

遺伝子組換え作物見学会再び

日本モンサント社から毎夏恒例の遺伝子組み換え(GM)作物の試験栽培の見学会の案内を頂戴した。昨年8月の見学会に参加し、その様子をブログに書いたためだろう(モンサント社には連絡していたし、ツイッター上で参加を募っていたのぎ茶会のブログにも紹介されていたから)。といってもまた来いというのではなく、後から届いたメールによるとブログで紹介して欲しいという趣旨。

それで久しぶりに「遺伝子組み換え作物見学会のブログ」を覗いてみた。9月の見学会参加者の感想とか収穫までの報告とかが掲載されていた。ただ、残念なことに「次回以降は、参加者の方々から頂いたご質問にお答えしていきます。」と書いてあったのに、それはなく次の記事は2014年度の見学会案内(ただし、9月19日の記事でラウンドアップの残留性への質問には答えている)

今年の見学会は7月25日(金)から9月10日(水)までに16回開催(土曜開催も1回あり)される。費用は常磐線佐貫駅までの往復交通費のみ。1回の定員は25名(先着順)。1人から申し込める。逆に10名以上の団体であれば別枠での開催も検討とのこと。

私は昨年8月下旬に参加し、除草剤を撒かない対照区で雑草が荒ぶっている様子に圧倒された。後半に見学した方が耐性遺伝子導入作物と除草剤の組み合わせの威力を実感できるが、懐疑的なので丸め込まれたくないという人は前半に行った方が良いかもしれない(昨年の8月第一週にははっきりとした差が確認できる状態だったので、7月中が狙い目か? アワノメイガの幼虫もまだ小さいし)。今年の夏はどれだけ暑くなるかも分からないし、台風が来て以降の見学会は中止なんてことも考えられるし。

佐貫駅は上野駅から電車で40分弱の距離にあるが、利根川を越えることもあり、小旅行の趣がある(以遠から通勤している皆さんごめんなさい)。駅からはモンサント社の用意したバスで20分ほど田園地帯の中を走るので、都会の疲れを癒すのにも有効か。

圃場見学の前に1時間ほど座学がある。特に予習していかなくても理解できると思うけれど、懐疑的なので丸め込まれたくない(またかよ)という人は、自分の感じている疑問をまとめていくと良いだろう。質問をしたり意見を述べたりする際も、典拠が明確なら説得力があるし、モンサント社の人も回答しやすいだろう。もちろん〈消費者のモヤモヤとした気持ち〉を率直にぶつけるのもまた有意義ではあるけれど。

なお、日本国政府がすでに認めてしまったこと、たとえば栽培許可についてを蒸し返そうとしても無駄だと思う。仮に広報の人を言い負かすことができたとしても、栽培許可が取り消されることもないし、モンサント社が日本での展開を諦めることもない。25人枠をお仲間で埋めない限り、「反GMの人って」という顰蹙を買うのが落ち(鮮やかに立ち往生させられれば別かもしれないが)。そこは行きのバスの中で署名する同意書にある通り、運営を妨げない範囲で頑張ってください。むしろ本音を引き出すことに専念するのが吉かと。

そうそう、賛成であれ反対であれ、可能ならばダイズかトウモロコシを作っている農家の人と一緒、それが無理なら話を聞いてから参加すると理解が進むでしょう。作物に触れたことのない都会人が語る農業って、やはり地に足がつかないことが多いから。そして農業に従事している人には、世界の種子産業の考えていることはきっと参考になるでしょう。

あー、もいっぺん行ってみようかな。遺伝子組換えダイズで作った納豆もほしいし(ぉぃ)。単騎乗り込みはちょっとという人はご一緒に。

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2013/09/11

ラーメンのトッピング

麺やスープが駄目だったら、美味しいチャーシューを載せてもラーメン屋としては成功しない。うまいこと言うなぁと感心していたら、リンク先は自分のブログだった。

わたしがウダウダと書いたことは、この喩えに収斂される。除草剤耐性を導入して、雑草管理が楽になったからと言って、それだけでダイズの種子が売れるわけではない。収量や目的に応じた品質を満たさなければ、農家はその種子を買いはしない。

以前、EMのぼかし肥料を絶賛するのは都市住民(非農家)という話を聞いたことがある。実際に使った農家が否定的なことを言うと、農業未経験の都市住民から「石頭」みたいなことを言われた例もあるようだ。〈モンサントの悪行三昧〉を非難するのも非農家が多い、というのは根拠のない印象論ではある。種子市場の実際を知っている人の意見を聞いてみる必要があるだろう。

ちなみにモンサントは大企業ではあるが、トヨタやNTTと比べれば普通の会社で、大資本による市場独占というのとはイメージが合わないそうである。

モンサントの説明を鵜呑みにして、種子独占はないなんて書きやがって、この御用市民!と石が飛んで来るかとひやひやしていたが、思わぬところから援護をいただいた。感謝。

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2013/08/29

モンサント社の遺伝子組み換え作物デモ試験圃場を見学してきた

遺伝子組換え作物に対する立場は、原子力について以上に複雑だ。正統的科学教育を受けた立場からは拒む理由は少ない(とはいえ、学校で学んだのはタンパク質どまりで、遺伝子については雑誌の拾い読み程度で系統立てて学んではいない)。一方で、「知識人、とくに文科系の知識人は、その本性からしてラダイットなのだ」(Snow)から、その傍流の末席に連なろうとする身としては、前者に対して「専門バカ」「理科至上主義」という悪罵を投げつけて抵抗せざるをえない。

結局のところ、既知の組換え作物に対しては正面切って反対する理由はなく、種子の独占とか遺伝子汚染とかの懸念を盾に嫌味を言うのが関の山。

そんなところへツイッター経由で、日本モンサントの組み換え作物圃場見学会の情報が舞い込んだ。見学会そのものはモンサント主催だが、そこへ団体で申し込むので参加者を募集すると主催者サイトが次回の内容に更新されているので紹介ブログへリンク)。直感に誘われて申し込み。かくして8月25日(日曜)に、茨城県稲敷郡河内町にある河内研究農場へ赴いた。

車中から田んぼの向こうに見えた圃場。青い防風ネットが目印。

集合は常磐線佐貫駅。モンサントが用意したバスに乗り農場に向かう。車内で概要の説明を受け、同意書(1.スタッフの指示に従うこと、2.見学会の運営を妨げないこと、3.ほ場内の物を持ち出さないこと、4.写真・動画を公表する際はモンサントへ連絡すること)へサインする。2.はたぶん、途中で演説を始めてしまう人対策だろう。原発事故以降の放射線説明会でよく登場する迷惑タイプ。4.は商業出版が対象で、個人ブログなどの場合は事後通知で構わないという説明。説明の仕方が悪くて「モンサントがこう言った」と言ってない情報が広まることがないようにという趣旨だと。おかしかったのは、写真・動画は撮影完全自由にしていたところ、全編動画を撮影する人がいて、他の参加者から「あれでは質問しにくい」と苦情が寄せられたことがある、と(というわけで、スライド説明と質疑中は撮影禁止に)

日本モンサントは以前から当地で育種農場を運営していたため、組換え作物を栽培する圃場を設けるのに関しても地元から特に異論は出なかったらしい。苦情が来たのは、「見学会に来た人が撮った写真にうちの洗濯物が写ってないか(分かっていたら干さなかった)」というもので、これは見学会の日程を地元に知らせることで了解してもらったと。

気になったのは、研究農場周辺の道が狭いため地元車がバスとすれ違えず、脇道へ待避してもらったこと。これは見学者として責任の一端を感じざるを得ない。自家用車などで行く人は十分に注意してもらいたい(「組換え作物の栽培止めろー」などというデモはもってのほか...まぁ、仮に申請されても公安委員会が条件をつけるだろう)

二階建ての小さな研究棟世界的外資企業の研究農場というので勝手につくばの研究所的なものを想像していたが、実にこじんまりとした二階建て。

玄関 表札は立派なのが掲げてあったが、「御用の方はインターホンで」は手作り。
「ご用件のある方はインターホンを押してください」と手書きの案内 サンダルに履きかえて中に入ると壁にポスターがたくさん貼ってある。商品宣伝かと思ったら「倫理」とか「人権」とか書いてある(不覚にも撮り忘れた)。後で話を聞くと本社から掲示を指示されている由。2階に用意された部屋でスライドを見ながら小一時間座学。
詳細は省くけれど、意外だった点をいくつか挙げると
  • モンサントカンパニーは世界に約21,000名の社員を擁するが日本モンサント自体は小世帯
  • モンサントは種子そのものの販売よりは種子会社へのライセンス提供が大きい
  • 組換え作物体で製品化できたのはまだ2種類(注1)
  • 当面はマーカー育種(分子育種)が主力(注2)

ここは個人の感想です、というわけではないが、モンサント社から指摘を受けたので注釈を加えた。

種子独占の懸念

今の日本の農家、特に規模の大きいところがどれだけ自家採種(翌年撒く種子を自農場で生産)しているか知らないのだが、「自家採種」でググった結果を見るとどうも農協から毎年購入しているところが多そうだ。

自家採種が主流の時代ならば、種屋から毎年買わないと営農できないというのが忌避されるというのは理解できる。自家採種できないようにF1(雑種第一代)にされたら歯噛みしたくなるのも分からないでもないが、それは社内講習用に教科書を一冊だけ買ってコピーして使うのと似たようなもので、威張れる話ではない。モンサント社は「映画「モンサントの不自然な食べもの」への見解」の中で、他の種子会社も「収穫した種子を播種しない」という契約を農家と交わしていると主張している。

種子が外国企業によって独占ないし寡占化されたら、食料戦略の首根っこを押さえられたようなもので、独立国としてありえない!と噴き上がる方がいるかもしれない。だが、不作が続くソ連にコムギを輸出して戦略的優位に立ったと思ったアメリカは、いざ禁輸で締め上げようとしてもうまくいかなかった歴史がある。売れなければ作っているアメリカの農家も、売っている商社も干上がってしまうのだから抜け道を見つけるに決まっている。

しかもモンサントは種子を直販だけしているわけではない。全米で100社あるという種子会社への技術提供も事業の一つ。これは当然で、遺伝子組換えで導入できるのは単機能。除草剤耐性だけ入れればそれだけで売れるわけがない。従来の売れ筋に導入してこそ意味がある。そして種子の売れ筋とは、農地の環境とか消費者の嗜好によって異なるわけで、それを単一の種子(品種)で押さえることは不可能。仮に強大な権力が作付品種を強制できるような状況になっても、日本人からジャポニカ米を取り上げてインディカ米を強制するのは政治的に好ましくないと判断されるのではないだろうか。

なぜ除草剤耐性が真っ先に導入されたかを説明しておこう。農地における雑草との闘いには長い歴史がある。草取りは、機械でも不可能ではないけれど基本は人力で重労働。耕耘は土地によっては表土の流出をもたらす。除草剤は選択性、つまり雑草も枯らすが作物も枯らしてしまうのが問題に。そこで選択性は低いけれど安全でよく効く除草剤に対する耐性を作物に導入できれば、雑草防除が楽になるという発想。農地が広大な場合、耕耘も草取りも不要というのは経費的なメリットにとどまらず、化石燃料消費や温暖化ガス排出を抑制する効果も出る。

というわけで、「世界の種子をモンサントが独占し、毎年の購入を強制され、農業の自立のみならず食糧安保から国家の独立までが脅かされる」というのは、ちょっと妄想入っているという感じになった。

隔離ほ場へ

座学を終えてバスで圃場へ向かう。遺伝子組換え作物を栽培する隔離圃場というと厳重な物理的封じ込めを想像するが、国の指示によれば柵で明瞭に区切ること、隔離圃場である旨を表示すること、そして水洗い場を用意することの3つで足りるらしい。最後の水洗いとは、圃場から外部への種子などの持ち出しを防ぐため、農機具や靴裏を洗うのが目的。ちなみにここで栽培されている遺伝子組換えダイズ、遺伝子組換えトウモロコシは、いずれも日本国内の一般圃場での栽培も認められている品種である。

青い網を張った柵が境界。隔離圃場の外側にもトウモロコシ青い網を張った柵が境界(隔離圃場の条件1)。手前のトウモロコシは圃場への害虫誘引のためのスイートコーン。

隔離圃場であることを表示する看板 入口そばのフェンスには隔離圃場であることを示す看板(隔離圃場の条件2)。立入禁止の看板も。
立入禁止の看板
見学者も長靴に履き替える 圃場に入るには見学者も長靴に履き替える。
洗い場には蛇口が4つ。水を張ったトロ舟は靴洗い用。たわしやブラシも用意されている。 退場時の長靴や持ち出す農機具を洗うための設備も用意(隔離圃場の条件3)。
雑草ぼうぼうの対照区 ダイズの圃場は4区画あり、除草剤(ラウンドアップ®)を撒かない、耐性を導入して除草剤を撒く、耐性を導入しないで除草剤を撒く、耐性導入しない在来品種(エンレイ)で中耕除草(慣行栽培)の順。
雑草をかき分けるとダイズが見える 最初の無除草区に植えてあるのは耐性導入ダイズ。あまりの雑草繁茂ぶりに見学者の一人から「ここまで放置するのはやり過ぎ」という批判もあった。ただし、隔年でトウモロコシとダイズは位置を入れ替えているので、前年の影響で現実以上に雑草が生い茂る脅威はないとのこと。
雑草がなく、ダイズだけの試験区 試験区は除草剤耐性を導入し、ラウンドアップを1回だけ撒いてある。1回だけなので、その後発芽する雑草もあるが、先に育ったダイズの影になるため生育できない。
ラウンドアップ散布の様子を写真付きで説明するパネル
Imgp0762 ラウンドアップ耐性を導入しないで除草剤を撒けば見事に立ち枯れ。しかし散布後に発芽した雑草は伸びつつある。
除草剤耐性を導入しないエンレイの区画には雑草も 耐性を導入しないエンレイの方が育って見えるのは品種の違いだとか。なお、エンレイ区の除草は手作業とか(ご苦労様)。
トウモロコシと説明役のUさん ダイズ畑の反対側はトウモロコシ畑。こちらは殺虫成分(BT)導入の有無を比較。向かって右はBT導入で、左は対照区。心なしか元気がなく枯れた葉も目立つ。この写真では分かりづらいけれど、モンサント社撮影の写真では背丈には若干の差が出ていることが見て取れる。 写っているのは広報部のUさん。農学部を卒業されてから商社で穀物輸入を担当されていたという。もしかしたら、分別輸入の煩わしさに「こんなことをやっていたら駄目だ」とモンサントに入られたのかな?と想像してみた。
トウモロコシに取りつくガの幼虫 トウモロコシを食害するガの幼虫。これは植物体の中に入ってからでは殺虫剤がかからない。
トウモロコシ畑には雑草がない トウモロコシ畑には雑草がほとんど無い。「こちらはどうやって除草を?」と聞くと手作業との返事。なお、害虫耐性とラウンドアップ耐性の両方を持つスタック・トウモロコシはすでにある。ただし、こちらの観察記録は2006年8月4日で途切れているのが気になるところ。
Imgp0771 今回見学したのは圃場の1/4程度のようだ。フェンスの向こうにもトウモロコシ畑。
Imgp0770 出る前に服を払い、長靴を洗う。この後、靴を巡るハプニングがあったけれど割愛。

アンケート

圃場からバスで駅まで向かう途中、アンケートの記入を求められる。が、揺れる車中ということもあり「メールでも構いません」と。それでも形があった方良いだろうと思い「詳しくはメールで」と記入して渡す。

その晩に送ったメールは以下の通り。

1.見学会の感想
企業の〈説明会〉の評価は〈買収的お土産の有無〉で決まると思っていた。ら、「遺伝子組換え大豆使用」製品という直球勝負に出られて驚いた。
しかも、もう一つのお土産が交配育種で作ったお米「とねのめぐみ」というのも、「モンサントは遺伝子組換え企業」という先入観を木っ端微塵。
向かいのダイズ畑が「ラウンドアップ散布1回で除草OK」なのに、トウモロコシ畑の除草は人力と聞いて涙を禁じ得なかった。
対照区に対して「まったく除草をしないのはありえない」と批判している参加者がいたが、むしろ「雑草の種を撒いている」と近隣から抗議されない方が不思議に感じた(その辺は微妙な事情が存在するようですが)。
実は植物としてのダイズの姿を知らなかったので、やっとイメージできるようになった。
見学させていただいた圃場の奥、あるいは左にも圃場があったが、そこでは何をしているのだろうか。
圃場での実験の意義が理解できなかった。正直なところ、〈見学用圃場〉以上の意味はあったのだろうか?
おまけ:選択性除草剤を開発している会社はどう思っているのだろうか?

2.GM作物への考えは変わりましたか?
はい(種子独占はないと理解)

(以下省略)

「圃場の意味」については2005年の栽培実験計画書(PDF)を見ると、主たる目的は展示ほ場として見学者にその効果を見せることらしい。なお、この年の害虫耐性実験の様子が「害虫抵抗性トウモロコシ観察記」として公表されている。

また2006年の栽培実験計画書(PDF)を見ても、主たる目的は展示ほ場として見学者にその効果を見せることらしい。なお、2004年の除草剤耐性実験の様子が「除草剤耐性大豆観察記」として公開されている。ここでは慣行区(対照)、土壌処理剤散布区(対照)、ラウンドアップ散布区(実験区)の3つに分けていた。慣行区は畝間の雑草を機械で鋤き込む中耕培土作業で除草。土壌処理散布区は土壌処理型の除草剤を播種前に散布して放置。

おみやげ


Imgp0790アンケートにも書いたが、お土産は「遺伝子組換え大豆使用」製品という直球勝負。
組換え作物とは関係の無いノベルティか何かであれば、「懐柔を図りやがったな」というところだが、「組換え作物は恐くないってお分かりでしょ(ニッコリ)」と差し出されれば「抵抗は無意味だ」。早速その晩、美味しくいただきました。

Imgp0781 もうひとつはお米だが、河内研究農場で開発された品種とあれば文句のつけようがない(従来育種法)。
ところでこの「とねのめぐみ(「タイムアウト」と表示されたらいったん戻って再クリックする)をググッてみたところ、「モンサントが遺伝子組換え米を!」と騒ぎ立て、後日訂正記事をアップしながらも「モンサントはとても嘘つきな企業です」と往生際の悪いブログを発見。そのエントリーには河内農場見学記が引用されていて
『試験栽培中につき関係者以外の立ち入りを禁止します』の看板が、ものものしい。訪問ツアーを企画した地元男性(50代)は「警戒が厳しくなっているなあ。去年の秋まではこんなじゃなかったのに…」と忌々しそうに呟いた。
と、まるで軍用基地みたいな描写。そりゃまぁ、訪問する方が嫌われ者を自認しているからそう見えるのもむべなるかな。
「TPPで日本がひっくり返る。遺伝子組み換えは、取り返しがつかないくらい危険。モンサントは悪徳企業だ。なぜ日本のマスコミは報道しないのか」。埼玉県川越市から遠路訪れた主婦(40代)は口を尖らせながら話した。

ちなみに出所は田中龍作ジャーナル。名前はよく似ているけど「犬吠埼に風力発電を建てたら「東京電力がまかなっている電気が全部作れます」」は田中優なので混同しないように。

補足

事前に目を通したモンサント社のよくある質問には、違う質問への回答をするという重大なミスがあったが、フォームから連絡しておいたせいか週明けには修正された。しかし、組換え作物反対派の皆さんはあのFAQを読まなかったのかなぁ。読んでも気づかなかったのかなぁ。

続きを読む "モンサント社の遺伝子組み換え作物デモ試験圃場を見学してきた"

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2010/09/23

タスマニア効果と研究者人口

科学研究費を税金で賄うことは正当だろうか。特になんの役に立つのか分からない基礎研究に注ぎ込むことは妥当なのだろうか。

余裕のある時代なら「食客三千人」とばかり当座の役に立ちそうもなくても才能があれば養っていけたし、研究者の方も「何かの役に立てようなどと考えるのは邪道」と澄ましていられた。しかし景気が悪くなり、研究資金を何年で回収できるかを問われるようになると、基礎研究は分が悪い。

その逆風は研究者も感じているらしく、いろいろと「役に立ちます」をアピールしようとする。たしかに素人には唐人の寝言のような数学の研究が暗号システムにつながりオンラインバンキングを支えているといった例はある。しかし、どの研究も社会の役に立つと言うのは度がすぎたフィクションだろう。まして科学研究予算の削減は、いずれ地球の破滅をもたらすなんて恫喝は止めた方が良い。逆効果だ。

それでは役に立つ研究を選抜して、税金からの研究費はそこに集中すべきか。選に漏れた研究は、独自に投資家を募ればよいのか。それは好ましくないと考える。なぜか。

タスマニア効果

ツイッターのタイムラインでだと思うが「タスマニア効果」なる言葉を知った。

リンク先のタスマニア効果と宇宙植民地化によると、それは以下の通り。


  • SF作家チャールズ・ストロスは現代の技術文明を維持するのに必要な人口は最低1億人と見積もった

  • 計算の根拠は航空産業だけを維持するのにも50万人が必要、という推計の積み重ね

  • ジョージ・ワシントン大学のHenry Farrellは、この計算を元にタスマニア効果を考察

  • タスマニア人は、ヨーロッパ人が訪れたとき人間社会の記録史上において最も単純な道具しか持っていなかった

  • これはタスマニアの人口が少なかったため

  • 人口がある水準以下になると、前の世代からの技術の学習の不完全性が技術の衰退となって現れる

もちろん仮説の域は出ていない。

航空機産業を維持するのに50万人必要と言われてもにわかには理解できない。だが、よく考えてみよう。木と布の複葉機ならいざ知らず、軽合金製のジェット機を運用しようとすれば必要な基盤は...
ボーキサイトの採掘と運搬
アルミニウムの精錬
銅鉄その他金属の精錬
超超ジュラルミンの製造
炭素繊維の製造
各種プラスチックの製造

機体製造の素材だけでこれだけが必要。しかもこれらを動かすためにはさらに発送電システムや輸送システムも必要だ。

さらには教育システムが必須。次世代に知識や技能を継承できなければ50年もしないうちにシステムは機能しなくなってしまう。たとえばネジを作れなくなっただけで飛行機は作れなくなる。一子相伝であれば、ぼんくらが一人いただけで断絶だ。逆に師匠のデッドコピーであれば発展の余地がない。すべてをお見通しの神様を頼れない以上は、ある程度の失敗を織り込んだ試行錯誤で臨むしかない。つまり教育の歩留まりは100%にはならないし、なってはいけない。だから学び手は必要数に対して余剰でなければならない。

そしてこれらに従事する人間は裸で霞を食い土の上に寝る訳ではないから、衣食住を提供する人員も必要になる。

というわけで、なるほど相当の人数が必要だと言うことが実感できる。その人数を割り込むと縮小再生産に陥る。そして技術の劣化がある程度進んだところで安定化するが、中には文明崩壊にまで進むこともあるだろう。肝心なのは総人口ではなくて、ある分野に従事する人口。「モノになりそうな基礎研究」をする人の周りに「海のものとも山のものともしれない」研究をする人がいて研究者人口を維持しなければ、モノになりそうな研究をする層が薄くなってしまう。

これが役に立つ(と思われる)研究を選抜して、税金からの研究費はそこに集中するのが好ましくないと考える理由。もちろん小さな政府のもとで科学研究は民間主導となれば話は少し変わるが、民間が短期間での高率の投資回収ばかりを望めば、遠からず危機的状況に陥るだろう(ただし民間の方が長期的な利益に敏感であるという期待も持てる:多数の有権者よりも、少数の株主の方が同意を得やすいから)。

なお飼育、もとい扶養している研究者を研究プロジェクトの中に割り振るならば、一見タスマニア効果の陥穽を逃れられるように見える。また大きな研究の方向を指し示すことも大切。だが人は全知全能ではないことを知るべきだ。「あそび(ゆとり)」が大切。近視眼的な管理では次世代研究の萌芽を摘んでしまう危険がある。

そもそも将来何が役に立つかなど誰にも分かりはしないのではないだろうか。

と言っても開き直りと受け取られては困る。誠心誠意、と言うと語弊があるけれど各研究の予算要求説明には理解してもらうためのギリギリの努力を尽くすべきだとは思う。


スケールメリット


ところで航空産業だけを維持するのにも50万人が必要であった。飛行機を飛ばすための燃料を、そのためだけに製造したらどうなるだろうか。ジェット燃料というのは灯油の一種であるが、石油(原油)からはそのほかに石油ガス、ガソリン、軽油、重油、アスファルトが取れる。その全部が利用できれば採掘精製費用は均等に分担できるが、灯油しか使わないとなれば、そこで全費用を負担しなければならず、つまり相当高いものになる。ちなみにガソリンはガソリンエンジンが普及するまでは使い道がなかった。仮にガソリン自動車をすべて電気自動車や水素自動車に置き換えたところで、ガソリンがだぶつくだけで、灯油軽油重油等の需要が減らなければ石油(原油)消費量に変わりはない。発電や水素製造のためには石油需要が増すかもしれない。だから二酸化炭素生成量の削減には役立つかもしれないが、石油資源の節約にはたぶん役に立たない。

閑話休題。つまり石油ガスからアスファルトまで使い尽くすようなシステムがないと、ジェット燃料は高い物になる。これは電力や輸送システムにもいえること。いわゆるスケールメリット。航空産業専用にすると、よほどガンガン飛ばさないと高くつく(無駄が出る)のだ。日本で牛肉が高いのは、可食部が限られているからとも。あ、また話がずれる。

オーパーツを超古代文明の証拠と考えることの無理

軌道修正の振りをしてさらに逸脱。世の中にはオーパーツというものがあるらしい。エジプトの遺跡に見られる象形文字(ヒエログリフ)の中にはまるで現代のヘリコプターや戦車、そして、戦闘機のようなものがあるというのだ。で、それをもってエジプトには現代に匹敵する高度技術を持った先史文明が存在したのではないかと考える人がいるそうだ。

だが、ヘリコプターはそれだけがあっても役には立たない。たとえば燃料はどうするのか? まさにタスマニア効果が論じてきた問題だ。裾野なしに高度技術が単独で存在することはあり得ないのだ。ヘリコプターや戦車がタイムスリップしてきたという解釈の方がまだ矛盾が少ない(実際にはそんな無理をしなくても、十分に合理的な説明ができるらしい)。

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2008/09/17

TG植物による芸術


ルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだ「光る植物」で作品を作っている滝田順の講演を聴いてきた。

初期の作品は、クロロフィルの蛍光。風景になる新陳代謝を求めて光合成にたどり着いたとか。

アルコール抽出されたクロロフィルがブラックライトで赤い蛍光を発している。

次に植物から抽出した光合成系でATPを作り、それをルシフェリン発光系に移して光らせるもの。

暗闇で目を凝らさないと見えないくらいほのかな光。このとき机上に静置したものより手に持った場合の方が明るく見えることから、部分的に遮ることで光がより強く認識されるという仮説をたてて構想したのがBioluminescence garden

ルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだコケを背景にし、手前に普通の灌木を植える。夜になってコケにルシフェリン溶液を散布すると光りだし、灌木のシルエットが浮かび上がる。(図=灌木と地=コケの明暗が逆転する黄昏時にはどう見えるのだろうか?)

これを屋上庭園でやりたいというが、TG植物を開放空間に植えるのは難しかろう。

4番目が、MRIから作り出した自分の脳の立体模型にTGコケを生やしたLight, only light

暗くすると光っているのが分かる...と言いたいところだが、実際には肉眼では確認困難らしい。上記の写真ではわからないが、ダブルコンテナで厳重に封じ込められているという(組換え施設外で展示するため)。

遺伝子組換えで光らせることに執着する理由がいまひとつ分からなかったけれど、芸術家が生化学反応を利用しようとする取り組みが面白く思えた。

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2007/12/02

カルパインとCANP

勤め先のブログに原稿を書くことになった。テーマは言葉(に関係する会社のサービス)。

筆が進まないので「その他」カテゴリで暖機運転をしている。その一環として「言葉は仲間(敵味方)を識別するもの」で一連の記事を書いた。もっとも分かりやすいのは政治や宗教の分野だが、あまり具体的に書くと地雷を踏む可能性がある。

そこで多少は勝手の分かる自然科学に題材をとることにした。真っ先に思い浮かんだのはカルパインとCANP。両者は同じものなのだが、独立して研究を進めたグループがそれぞれに命名したため、ながらく一物二名の状態が続いた(実際には派生する言葉にも続々と別名——カルパスタチンとCANPインヒビターとか——が)。

もっとも、この辺の事情も当事者からすれば面白おかしく書かれたくはないだろうし、なにより事実関係の間違いがあっては失礼になる。

そこで、まず軽くググッて見たが、意外にも一般的なカルパインの説明は少ない。wikipediaにさえない(誰か書いてください)。そんな中で見つけたのが臨床研(東京都臨床医学総合研究所)の酵素機能制御研究部門のページ(フレーム構造になっているのでトップページから「研究内容(より専門的)」をクリック)。

当時の鈴木研ではカルパインのことをCANP、calcium activated neutral proteaseと呼んでおり、商売敵であった京都大学の故・村地孝先生(Murachi Awardの所以の先生です)のつけた「カルパイン」という名称は、戦時中の日本の「ベースボール」のようにタブーとなっていました。そのいきさつについては、涙無しでは読めない鈴木先生の幻の名著「カルシウム依存性プロテアーゼ研究の動向:第一回 研究の幕開け−東西問題のはじめ」及び「第二回 カルパインの構造決定と東西問題」(細胞工学Vol. 10 (1991), No. 7, pp545-551及びNo. 9, pp719-727)に詳しく書かれています(興味のある方は是非ともお読みください!)。結局、東西ドイツの統一あいなった1990年の翌年の、ミュンヘンで開催された国際プロテオリシス学会(ICOP)において、「カルパイン」という名前に統一されました。名付け親の村地孝先生は、その直前に急逝されてしまいました。

これぞ探していた記述。熾烈な競争があったこと、相手陣営の用語はタブーだったこと、現在はカルパインに統一されたことが要領よくまとめられている。

そして、村地先生への追悼企画として掲載された「カルシウム依存性プロテアーゼ研究の動向」がこのように評価されているのが我がことのように嬉しかった(村地先生は月刊「細胞工学」の編集顧問)。

学生時代、「蛋白質核酸酵素」を拾い読みしていた私はCANPしか知らず、体を表す良い名前と思っていたが、ほかでもない「あの」カルシウム依存性中性プロテアーゼを指すには、固有の名前が必要だったのだろう(カルパイン以外にそういう酵素があるかは知らない)。「パイナップルビジネス」とか「ペリサイエンス」とか、実に造語の巧みな方だった。

うーん、一般受けしない話になりそうだ。やはりiLinkとFirewireにしておこうか。いや、フロッピーディスクとフロッピーディスケットにしようか。

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2005/01/03

鉾田市にバイオトイレ

茨城県鉾田市内の「野友・串挽 一里塚」ロードパークに無公害トイレなるものが設置されていた。普通の簡易トイレが薬液循環式で、臭いは抑えられていても汚物は減量されず、ある程度使用されると汲み取りが必要なのに対し、これは看板を信じれば「24時間以内に炭酸ガスと水に分解」するという。それなら汲み取りの必要はなく保守は楽になろう。

好奇心と生理的欲求に迫られて使用してみた。便器を洗い流す仕組みはないので印象は汲み取り式と一緒。冬の早朝だったので臭いがしなかったのは温度のせいなのかバイオのせいなのかは不明。

便槽にはおがくずのようなものが入れられてあり、指示に従って使用後にボタンを押すと撹拌が始まった。おそらくおがくず(のようなもの)は担体で、そこに菌が付着されているのだろう。

注意書きには「団体でのご使用は能力に限界があるためご遠慮ください」とあった。24時間で分解できるのは一人前?

撹拌前には機械音は認識できなかったので、おそらく強制通気はされていない。だとすると嫌気分解(撹拌は汚物と菌との接触促進)。これならタンパク質の約16%に相当するチッ素は大気中に還っていくが、素のアンモニアは分解されないだろうなぁ。あー、尿素は分解菌を抑制してそのまま貯めるのかな。

本装置に興味がおありの方は、鉾田市役所建設課または株式会社緑地環境開発へお問い合わせください。

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