遺伝子組換え作物反対派との対話?
どこから仕入れた情報なのか定かでないが、2月の「知らないではもったいない!!!米を食べて治す・予防する研究が進んでいる」に続いて、今度は「遺伝子組換えの現状と未来を考える」というシンポジウムを聞いてきた。異色なのは第二部としてGM(genetically modified=遺伝子組換え)作物に反対の立場の人物に反対討論をさせているところ。
案内の冒頭では次のように現状が紹介されており、ここだけ読めば「GM作物を受け入れよう」にも見える。
73億人を超えた世界の人口は、毎年7千万人も増え続けています。この食糧生産手段の一つに、遺伝子組換え(GM)作物があり、その生産開始後わずか20年で、米国ではトウモロコシ生産の93%、大豆の94%を占め、世界28か国で栽培されています。日本は、世界一のGM作物の輸入大国
主催は市民キャビネット農都地域部会とあるが、はてどんな団体だろう? という詮索もろくにしないで申し込んだ。立場の異なる人物を呼んで同席させるというところが気に入ったから。
なお、主催者によるまとめも公表されており、講演者の資料も一部はすでに公開されている。
遺伝子組換えの現状と未来を考える
第一部の講演「遺伝子組換えの現状と未来を考える」は国立研究開発法人農業生物資源研究所(4月からは国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)の田部井豊さん。品種改良の話から始めて駆け足で。これについていける人はどれだけいるだろうか。なお、配布された冊子のうち、「みんなで考えよう 遺伝子組換え農作物・食品」「食と農の未来を提案するバイオテクノロジー」「カイコってすごい虫!」はネット上に公開されている(「みんなで考えよう 遺伝子組換え農作物・食品」のp1とp9のグラフについては最新版が挟み込まれていた)。
質疑応答・議論
第二部はアンケートを記入しながら聞き流していた(なんせ配布資料にホメオパシーがどうのこうのと書いてある)が、途中たまらず「4.第二部 コメンテータのご発言について、感じたこと、思ったことをお聞かせください」に「良いモンサントはオレンジの香り、悪いモンサントは牛が下痢をする」と書き込んだ(佐々木倫子『動物のお医者さん』に出てくるエピソードのパロディ)。
その後の質疑応答にもややうんざりしたところで毎日新聞の小島記者登場。「あ、この人の話をこのあいだ聞いたな」と思ったものの何の会だったか思い出せず(上記「米を食べて治す・予防する研究が進んでいる」だった)、そのためご挨拶もせず。
懇親会には出たものの、席が固定かつテーブルが分割されてしまったため、講演者の話の続きは聞けなかった。こちらのテーブルもそれなりに盛り上がっていたが、「組換え作物に賛成な人って、自分では食べませんよね」みたいなことをいう人がいたのでモンサントの圃場見学をするとお土産に組換え大豆で作った納豆をもらえることをにこやかに披露。しかし福島県から多数の避難民が出ているようなことを言われたときには、つい声を荒らげ「今でも200万人住んでいますよ」と注意を促したが「会津の人は避難していませんね」となんか噛み合わない。用心してエタノールは入れていなかったが、さらに自重レベルを上げ、深くは追及しなかった。
アンケート
会場で提出したアンケートには以下のように記入した。
2.本イベントをどのようにお知りになりましたか(複数回答可)
Twitterかな?
3.第一部 講演について、感じたこと、思ったことをお聞かせください。
盛り沢山で駆け足なので消化不良の感。的を絞った方が良いような(聴衆を選別して)。←参加申し込みの時点でテストもといアンケートをするとか。
NPBTって何?
グルホシネートのLD50値が変(2.895と1000分の1になっている)。「静聴」ではなく「清聴」。
4.第二部 コメンターターのご発言について、感じたこと、思ったことをお聞かせください。
セラリーニ! 「良いモンサントはオレンジの香り、悪いモンサントは牛が下痢をする」
フグ刺しが食べたくなった(けど電焼フグでがまん)
5.同第二部 登壇者お二人とフロアの質疑応答・議論をお聞きになって
「フォーカス」って通じます?
先天性異常で脅しをかけるのは感心しない。「GMのせいですか、放射能のせいですか」とは思いませんか。
食物の発がん性を気にしすぎないのは賢明。
耐性雑草は自然選択ではないの? ですよね! GM関係ない。
お、小島さん登場! Btが洗って落ちるならラウンドアップも落ちるでしょう。
6.興味を持った個別の内容と全体評価を教えてください。
全体評価:4
主催者へのメール
帰ってきてから、アンケートの控えを見直すと独り善がりで分かりにくいかもという懸念を持ったので、主催者へ補足のメールを送った。以下、その抜粋(実際に送ったメールはプレーンテキスト)。
3.第一部 講演について
「的を絞った方が良いような(聴衆を選別して)」
聴衆がどこまで理解しているかが分からないと演者としても話しにくいと思います。しかも組換え作物の問題は分子生物学、農学、経済学、政治学、社会学...と広い分野にまたがっています。
アンケートには「参加申し込みの時点でテストもといアンケートを」と書きましたが、その他にもすぐに入手できて半日程度で読み終えられる書籍あるいは5ページ相当のウェブテキストとか30分程度で視聴できる動画を提示して「ここまでは理解されていることを前提に進めます」として、範囲を限定しないとTPPとグリホサートの毒性と組換えの是非がごちゃまぜになることに。
4.第二部 コメンターターのご発言について
皮肉ばかり書いて申し訳ありません。
「フグ刺しが食べたくなった」
一般的に食されているものを安田さんが「毒があるから避けるのが文明の知恵」みたいな言い方をされたものですから。
5.同第二部 質疑応答・議論について
「「フォーカス」って通じます?」
田部井さんが最初の質問者に向けて「(質問を)フォーカスして」とおっしゃっていましたが、市民向けでは使わない方が良いように感じました。
「先天性異常で脅しをかける」
胎児や子孫に影響があるかも、というのは訴求力がありますが、農薬も上乗せ放射線も組換え作物もない状態でも先天性異常を持って産まれる子、あるいは産まれることができない胎児は一定の割合で存在します。霊感商法と紙一重ですから慎重に扱うべき話題。
「GMのせいですか、放射能のせいですか」
異常の原因を安易に決め付けるべきではありません。被爆者の家庭に上肢欠損児が生まれ、原爆のせいでは?と思っていたら実はサリドマイドのせいであったという例もあります。もし原爆のせいと決めつけ、薬害の可能性検討を「隠蔽!」と排除していたらどうなっていたことやら。
「食物の発がん性を気にしすぎないのは賢明」
これは安田さんの回答に共感。
「Btが洗って落ちるならラウンドアップも落ちるでしょう。」
有機農業で使われるBtタンパク質は外用だから洗えば落ちるとおっしゃっていたが、それならラウンドアップも(展着剤を使うのはおそらくどちらも同じ)。
なお、アンケートの6.は質問の意味を解し兼ねました。
GM作物反対の人はもっぱら健康被害を理由にするけれど、被害は明確になっていないのにもかかわらず「被害が出ないように、出たらすぐ分かるようにしてGM作物を受け入れよう」という妥協を模索しない路線は先行き難しいだろう。
一方、GMO推進派も、慎重にやらないと百日の説法屁一つということもあるのを忘れないでほしい。
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