「シン・ゴジラ」への違和感3つ
もうそろそろネタバレしても良いですよね?
しばらく前のことだが、「シン・ゴジラ」を観た。評判に違わぬ面白さで、ことに〈水ドン〉のシーンでの「まずは君が落ち着け」に、嗚呼!ネットで流行っていたのはこれであったかと感動。ゴジラの出番が少ないという不満の声もあるらしいが、作り物というのは詳細に見せたらボロが出るもの。着ぐるみ怪獣は子供騙しの域を脱しにくいし、CGを過信すればそれは落とし穴に。だから、巨大不明生物災害対策に奔走する人々を中心に据えたのは正解だろう。それゆえに全身からの破壊光ビームはむしろ〈やり過ぎ〉に感じた(爆撃機に対抗したり首相の乗ったヘリを撃墜したりするには旧来の火炎放射では無理であるが)。
いかにも派閥順送りで就任したような農水大臣が臨時総理に祀り上げられ、「ラーメン伸びちゃったよ」と昼行灯っぷりを発揮していたかと思うと、「生活があるんだ。簡単に避難なんて言ってほしくない。」と生活者の姿勢を見せ、国連安保理の介入を遅らせるのにフランスに働きかける離れ業を成功させる(実務は官僚が担い、この人がしたことといえば事が済んでから駐日フランス大使に深々と礼をすることだけみたいだが)のも見物。
恋愛とか家族愛みたいなものを排除したというのも評判だが、これまた映画によく出る、権威を笠に着て主人公の邪魔をしたあげく、あっさり殺される(いわゆるフラグの立った)分かりやすい悪人が出てこないのも良い。あれは図式的過ぎる。
そんな「シン・ゴジラ」なのだが、納得がいかないというか、違和感を覚える点が3つある。
まず造形。太腿は小錦関みたいだし、尾はワオキツネザルのように長い。はっきりいって長すぎないだろうか。
次に、なぜ血が固まると凍るのか。放熱機構が停止したら過熱するはずで、メルトダウンしたゴジラが親指を立てながら溶岩の中をアルゼンチンに向かって沈んでいく姿こそふさわしいラストではないか! この2つはゴジラという架空の生物の設定に関することなので突っ込んでも仕方が無いとも言えるし、もしかしたら劇中で言及されていたのを見逃した可能性もある。だからもう一回見てからにしようかと思っていたら、なんと日経サイエンス12月号が「シン・ゴジラの科学」を取り上げるという。これは期待。
3番目は自衛隊の攻撃が全弾命中とは精度良すぎないだろうかという点。むかし、第十雄洋丸事件というのがありまして、最初の砲撃で沈めることができなかったのは当初の射撃は「第十雄洋丸」の側面を破壊して浸水を促すとともに、積み荷のナフサやLPGを燃やすのが目的だったとはいえ、魚雷攻撃は1本が不発(ウンともスンとも云わないまま海底へ)、もう1本は目標の下を潜り抜けてはるか彼方でこれまた海底へ(残り2本は命中したものの沈没には至らず)という不始末。停まっている船すら沈められないのかと散々の評判だったとかすかに記憶する。もちろん時代は変わり、技術も進化したからありえない話ではないのだが、やはり引っかかる。
そして大好評の無人新幹線爆弾と無人在来線爆弾。架線が切れていても電車は走るのかなぁ。脚に命中したということはゴジラは線路上に乗っていたわけで、当然架線なんてぶった切られていると思うのだが。それともあれは命中ではなくて、無線誘導か何かによる近接爆発だったのだろうか。日経サイエンスに登場する専門家は「極限環境の生物学及び海洋生物学」「放射線生物学」「深海生物生態学」なので、これの解明は期待薄。
えっ、「4つある」って? それはアレ、お約束ですよ(ビグルス枢機卿を演じるテリー・ジョーンズの姿を思い出に)。
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