2016/02/28

『決してマネしないでください。』の続編を望む

月刊「細胞工学」の3月号(2月22日発売予定)を買いに三省堂書店まで出かけたが、未入荷だったので『決してマネしないでください。』第3巻だけ買って帰ったのが23日。いそいそと封を切って読み始めてから話がつながらないので第2巻を未読であることに気づく。慌てて電子書籍をダウンロードして読んだら、また第1巻を読みたくなって、結局第3巻に進んだのは24日。

結論を先に言うと、3巻ともとても面白い。舞台は工科医大。高科教授の下に集まる面々(と言っても研究室メンバーは2人だけで、中心は教授が主宰する怪しいサークルのメンバー)が繰り広げる活劇。聞けば作者の意図は学習マンガで、なるほど状況設定は似ている『動物のお医者さん』に比べると解説が詳しい(もうひとつ『もやしもん』とも似ているようだけれど、こちらは何故か未読)。末尾には参考文献も揚げられている。そしてとにかくもったいないほど(学術もギャグも)ネタが詰め込まれている。

雑誌連載は終了しており、したがって単行本もこれが最終巻になる蓋然性が高い(帯には「堂々完結!...したらクレームの嵐!」とも)ので、読者アンケートの質問5「続編が発売されたら購入しますか?」には「購入する」に丸をつけて返送しておいた。出版社では未だに紙版の売れ行きと読者ハガキが重視され、電子版の販売数は考慮されてていないという噂もあるので、紙版を購入して正解だった。

ちなみにアンケートには以下のように回答した。


購入するきっかけは?(複数回答可)
「モアイ」の1話試し読み、『日本人の知らない日本語』の著者の新作だったため

マンガ本編で一番面白かったものは?(1つ)
ムリ(1つに絞り込めないという意図)

オマケで、面白かったものは?(複数回答可)
描き下ろし4コマ、決マネコボれ話、ニュートリノ解説、描き下ろし前日譚、描き下ろしおまけマンガ、インタビュー記事、あとがきマンガ実験動画そのものは面白いのだが、解説は字が小さくて読みづらかったので選択せず、また「素数大富豪」も発想は面白いと思ったものの実際にやろうという気はないので除外)

続編が発売されたら購入しますか?
購入する

感想、蛇蔵氏へのメッセージ
よくぞあれだけのネタを詰め込んだものと感嘆。頭おかしい(ほめてます)としか言いようがありません。なお、キラキラ女子が苦手というゾンビちゃんがふりふりのスカート(鹿コスはパンツ)等の、余韻というには大きすぎる謎が残っているので、是非続きを希望。スピンオフも歓迎。


モアイで試し読みしたのはQ15のお笑いロボコンだったように記憶するが、今は別の3話が読める。)

細かいことを言えば、いくつか気になるところはある。もっとも調べてみると問題はない、たとえば工科医大なのになぜ理学部があるのか? と思ったら東京工業大学にも理学部はあるといったケースも。また飯島さんが構えている消火器のノズルは泡消火器っぽいと思ったら、強化液消火器の中にはレバー操作で噴射するものもあった(レバー操作するのは粉末式とガス式だけかと思っていた)とか。

飯島さんは普段パンツスタイルなのに、表紙ではスカートなのは読者サービスだろうか(これは第1巻でも)。掃除機ホバークラフトにはAC電源が必要なのに、どうやって給電したの?という疑問は(ケーブル延ばしたっていいんだから)「堅いこと言わない」。

しかしヨウ素の蒸気を発生させるのに注意が「蒸気を吸い込まないよう」だけというのは疑問(p.17)。パソコンや精密機器のある部屋ではやらない方が良い。なべの材質も指定していないし(アルミだと腐食するから琺瑯引き推奨か)、使用するうがい薬の量を指定するのは必須。

監修者が厳しくチェックした後の漏れをこのように探すというのも(歪んだ)楽しみ方かもしれない。エタノールの蒸留は空冷じゃ無理だから水冷だ(第1巻Q2)とか。


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2011/10/04

放射能とゾンビ

動画サイトyoutubeにMEOWという怖いアニメーションがある。

墓場から蘇ったネコのゾンビが集団となってネコの都市を襲う。ネコの軍隊が出動して制圧できたかに見えたが...

可愛らしいネコの絵柄とコミカルな動きそして軽快な音楽とは裏腹に、背中に冷たいものが流れる展開なのだが、なぜ死んだネコが蘇り、生きたネコを襲うのか?

もともとゾンビ(Zombie)とはブードゥー教のまじない師(ボコ)が呪術で蘇らせた死人のことで、意思を持たず命令のままに動くので奴隷として使役される情けない存在だった。

それをホラー映画の主役に昇格させたのがロメロ監督。ゾンビに襲われた人間もゾンビになるという、伝染病的な性格が確立した(これは吸血鬼ドラキュラのアナロジーで、さらに遡れば狂犬病に辿りつくのであろう)。

ゾンビが生まれる原因としては、明示しない話もあるが、魔法(便利なものですな!)の他には怪光線(人為的なもの、また宇宙から降り注ぐもので、放射線とも言いかえられる)、細菌("I Am Legend" Wikipediaでの「地球最後の男」の解説(2011年8月29日 (月) 07:40 UTC)では吸血ウイルスとなっているが、ハヤカワSFの『吸血鬼』では細菌と書かれていて、光学顕微鏡で確認されている)、ウイルスが挙げられる。

(それにしてもゾンビ映画って沢山ありますなぁ...ちょっと調べてびっくり)

近年のものはウイルスが多いように思う(「バイオハザード」「28日後...」2002、「28週後...」2007、「ゾンビランド」2009など)。ウイルスは自己増殖できず、宿主の細胞機能を使わざるをえないので、感染から発症までには時間がかかるという生物学の常識はまったく無視されているが、魔法や放射能の説得力が下がった結果の人気上昇だろう。アナロジーの元であろう狂犬病がウイルス性であることも勘違いの原因かもしれない。(もうひとつの勘違いとしては、感染してすぐ発症する病気は実は防御しやすいことの見落とし。エイズが爆発的に広まってしまった原因の一つがこれで、無症状でも感染させることができたため、人類が病気の存在を認識したときにはウイルスは世界に拡散していた。)

ところが、このMEOWの設定はというと、なんと放射能なのだ。

開始16秒後に、放射能標識 ☢(☢)が描かれたドラム缶から液体が流れ出し、そこから瘴気が墓地に向かって漂っている。(ドラム缶が笑っているように見えるのも怖い)

このゾンビ化原因物質が襲われた都市にまで広がっていたというのも無理な話に思える(注ぎ口が上にあるから半分も流れ出していないし、街に瘴気は漂っていない)が、一方で噛じられずに死んだネコまでゾンビ化することは説明できる。

これも放射能の呪いの一つではないかと、残念に思う次第。むしろ天空に妖しい星が輝きだして、の方が... 超新星爆発が誤解されるからダメか。

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2011/08/02

「僕と日本が震えた日」(第2話)のオチに苦笑

先日開かれたガイガーカウンターミーティングを紹介したおかざき真里さんの漫画「お母さんのためのGCM講座体験談」の中に「内容は鈴木みそ先生の漫画で」というセリフがある。それがルポ漫画「放射線の正しい測り方」。おかざきさんやいまいみほさんの作品が「こういう会に行ってきました」(これはこれで大切)なのに対して、放射線測定の方法について詳しく解説している。ちなみに3つの漫画に描かれる野尻美保子さんは同一人物とは思えないほど異なっているが、ご本人の談によれば鈴木画が一番似ているとか。(私はいまい画の方が感じが出ていると思う。おかざき画は...)

さて、その鈴木みそさんは東日本大震災を題材に「僕と日本が震えた日」という漫画を描かれ、第2話までがWebコミックとして公開されている。

その第2話は出版業界の受けた震災の影響。紙が足りなくなった(石巻にあった製紙工場が被災した)とは聞いていたが、インクの不足も深刻だったらしい(元編集者としてぞっとしたのは、電力使用制限令の影響で、印刷機の運転がシビアになり「1ページでも遅れたら雑誌ごとまとめて後回し」という状況になっていることで、締切りが48時間も早くなるには、思わず出版界に戻っていないことを感謝してしまったり)。また委託していた商品が流されたり水をかぶったりで売り物にならなくなってしまったのも深刻な事態(ここで委託販売制度の解説が入り、佐々木俊尚が『電子書籍の衝撃』などで「本のニセ金化」と呼んだ自転車操業も描かれている)。

それが全部流されてしまった! これを「神様の万引き」と絶妙な比喩で表現。それに対して電子出版が希望の種という展開が用意される。たしかに電子出版なら、どこかにデータが残っていればアッという間に〈増刷〉できる。端末1台で無制限に書籍を読むこともできる。紙に縛られていた出版が、紙が流れたことを奇貨として電子出版に...と調子よく話が進むわけではない。続きは是非comicリュウのサイトで読んでほしい(紙版も出るようなので購入してもらえるとなお良い)。最後のページは(笑いすぎて)涙なくしては見てられない。

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2011/05/09

被災地に届け「動物のお医者さん」

ツイッターをぼぉーっと眺めていたらこんなツイートがあった。


動物のお医者さんはすべての大学院生必読の書。あれさえ読めば「うちの先生はでたらめだけど、漆原教授よりはましだ」と思えるはず RT @Mihoko_Nojiri: 動物のお医者さんねたという指摘が多数。最近動物のお医者さんはうちのトイレに設置されています。(時々入れ替える)

「動物のお医者さん」は根強い人気がある。きっかけは覚えていないが(おそらくNIFTY絡みだろう)私も読んでいたし、しばしば話題に取り入れていた。だが買いそろえた全12巻は、被災地の子供たちに漫画を送ろうキャンペーンに賛同して寄付してしまった。

動物のお医者さん全12冊

「花とゆめ」連載時には女子高生に獣医志望熱をもたらした名作である。しかし連載終了からすでに20年近いので、2003年にTVドラマ化されたとはいえ知られざる名作になっているのではないかと危惧していた。そこでこの機会に子供たちの目に触れる場への提供を思い立った次第。(と思ったら、花とゆめCOMICS品切れは勘違いのようで、まだ新品を購入可能らしい)

理系女子がネタを提供しており(巻末掲載の協力者名の中には知った名前も)、獣医学部に限らないキャンパスライフが描かれているので、被災した中高生の進路の道標になることを期待したい。

もっともあの作品を本当に楽しめるのは研究室に入って以降だと思う。

なお、冒頭のツイートに登場する漆原教授は豪快でしばしば傍迷惑な人ではあるが、「気合を必要とする治療」の名手であるし、陰湿さとは無縁な人なので、実在する教員の中にはもっとひどい人がいるだろう。

「いまどきのこども」6冊と「シニカルヒステリーアワー」8冊

玖保キリコの「いまどきのこども」と「シニカルヒステリーアワー」もあわせて寄付した。

被災地の子供たちに漫画を送ろうキャンペーンは終了しており、報告用特設ブログによれば4月末までに集まった6万冊余のコミック・絵本などを数次にわたって届けているとのこと(第一便135箱11,672冊は公益社団法人シビックフォースが運び、第二便113箱10,196冊はユナイテッドアース預け)。

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2006/04/17

「死者の書」を読む

先日、誘われて映画「死者の書」を観た(岩波ホールにて7日まで)。

冒頭の短編映画があまりにたおやかだったせいか、始まるとすぐ半覚醒状態に。途中で意識は戻ったが、訳のわからないまま終了。印象に残ったのは「おれは、どうもあきらめが、よ過ぎる。」という台詞、それに鳴弦(つるうち)と反閇(あしぶみ)のシーン(上記サイトにある予告編で見られます)。

納得がいかないのは、処刑される大津皇子が肩までのざんばら髪なこと。ベアトリーチェ・チェンチを持ち出すまでもなく、首をはねるのにあの髪は邪魔。

あと、念仏を唱えられて退散するってことは悪霊の類なのに、それと仏姿がだぶらされていて、よくわからん。

実写でやったらB級オカルト映画になっていた可能性大(それで人形アニメにしたのか?)。

ネットをざっと探してみても、川本喜八郎の映像美を誉めるものばかり。

そこで青空文庫で釋迢空(折口信夫:おりぐちしのぶ)の原作を読む事に。

難しい。古文を読む素養のないことが暴露される。orz だが映画は原作をかなり忠実になぞっているらしく、文の難しいところは映像を思い出す事で、なんとか目を通し終えられた。もちろん結論は「やっぱりわからない」であるが。


誘ってくれた人がアニメーションとCGについて「一を聞いて十を語る」ので閉口。そのくせPIXARも「トイ・ストーリー」(劇場公開された長編映画作品としては、初のフルCG作品)も「ファインディング・ニモ」(フル3DCG)も「Mr.インクレディブル」(服や髪の物理的感触を極めて忠実に表現した点が特徴)もご存じないのだから開いた口が塞がらない。あー、口は閉じているのか開いているのか、ですって? 

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2006/03/06

アカデミー賞アニメ部門はウォレスとグルミット

ウォレスとグルミットがアカデミー賞を受賞した。「ハウルの動く城」がノミネートされていたので期待した人もいただろうが、正直なところ敵ではないと思う(「ハウル...」を見ないで言うのも失礼な話だが)。

はじめて見たのは世界初のクローンヒツジ、ドリーの毛で作ったセーターと世界初のDNAモデル(但しレプリカ)を見に行った「大英国展」にて。「ペンギンに気をつけろ」などの抜粋を放映しており、あまりの面白さに後日全編を見てビデオまで買ってしまった。

ワンシーンずつ撮影して作るクレイアニメ。今回の「野菜畑で大ピンチ! 」は企画から5年、撮影だけで18ヶ月かかっているという。前作までは約30分の短編だが、今度は長編。あのテンポで85分やられたら息も絶え絶えになってしまうだろう。

宮崎アニメも素晴らしいけれど、アカデミー賞をW&Gと競っても勝てないと思う。いえ、W&Gを貶している訳ではありません。

ところでNHKの7時のニュースは「受賞を逃しました」しか伝えず、何が受賞したかに触れなかったが、こういう報道の仕方は困る。

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2005/06/05

comic life

日刊デジタルクリエイターズの1747号で神田敏晶さんが、Comic Lifeを絶賛し、「日本初!ComicLife セミナー」を開くというので思わず申し込んでしまった。会場が噂に聞くdotBARというのも一因。

しかしさしものデジクリの告知力も、comic lifeを日本に紹介した百式の面白いもの発見力も、前日告知という悪条件は跳ね返せなかったようで、なんと神田さんとマンツーマンセミナーとなりました。

半分は、勤務先のお仕事に使えるかも、という邪念もあったが、実際を見てみると、これは純粋に面白い。受講者一名もなんのその、講師は乗りに乗ってどんどんコミックを作っていく。そして簡単。簡単すぎる。あまりに進行が早いので、記録係の女性が悲鳴を上げていた。神田さんのblogには即製のコミックが次々と。なかにはこんなことしていいの?というものも。(^^;

ネコの写真に吹き出しを書き込んだ「ねこまんが」というものが売られているのをみたことがある。このソフトを使えば手軽に作れるだろう。そういえばかつて、アルバムに吹き出しを書き込むなんてよくやっていたものだ(教科書の挿絵にも...)。

それにしても、神田さんと私とで、興味の方向が微妙つうかかなりつうか、異なっていたのが面白い。

残念なことに、この少し前にウイルスに感染したらしく、翌日から頭痛発熱に悩まされ、ついには寝込んでしまって、いまだにインストールに至っていない。

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