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2016/07/14

血小板の血液型?

ABO式血液型は赤血球の表面にある抗原によって決まる。だから血小板には関係がない。にもかかわらず、成分献血の現場ではABO式血液型毎に足りるとか足りないとか言っている。不思議には思っていたが、深くは追究しないでいたところ、次のようなツイートを目にした。骨髄移植後の患者にはAB型の血小板が必要だ、と。

どういうことだろうか? そこで時間のあるのを幸いに調べ始めたところ、思いのほか簡単に理由が明らかになった。

ググって見つけたのは福井大学医学部附属病院輸血部のウェブページ。おお、これはプロだ。「輸血Q&A」の質問18の回答を見ると次のように書いてある。

血小板はHLAクラスI抗原や血小板同種抗原を持っていますが、赤血球に発現されるいわゆる血液型物質A,B抗原はあるけど微量のため無視できます。従って、抗Aや抗Bの存在を考慮する必要がありません。

ふむ、血小板にABO式血液型に関与する抗原は、あることはあるけれど考慮する必要はないと。私の抱いた疑問はだいたい合っていた。ではなぜ骨髄移植の場合にAB型血小板が必要になるのか。

しかし、血小板製剤は血漿をかなり含んでおります。赤血球の寿命は120日ありますので、移植後も当分の間は患者の赤血球が残っております。骨髄移植後は頻回に血小板輸血が必要になることが多いので、マイナーミスマッチの時には血漿中の抗A、抗Bが問題となります。

「血小板製剤は血漿をかなり含んでおります」で膝を打った。使うのは血小板そのものではなくて血小板製剤。A型の人からの血漿にはB抗原に対する抗B抗体が、B型の人からの血漿にはA抗原に対する抗A抗体が、そしてO型の人からの血漿には抗A抗体と抗B抗体の両方が含まれている。したがって受血者の赤血球と供血中の抗体が反応するマイナーミスマッチが起こりうる(他方、供血中の赤血球と受血者の抗体が反応するのをメジャーミスマッチといい、輸血した赤血球が壊れてしまう)。普通の血小板輸血であれば受血者と製剤の型を合わせておけば済む。ところが骨髄移植では、移植後に血液型が骨髄ドナーのものに変わることがあり、その場合、過渡期には2種類の赤血球が同居することになる(上記ツイートに「患者さんの血液型が定まるまで」とあるのはこれを指す)。その間に血漿を含む血小板製剤は何型のものを投与すれば良いのか。

対策としますと、血漿を除いた血小板(洗浄血小板)を入れればいい訳ですが、少し手間ですし慣れていないと不安です。そこでAB型血小板を使用すれば、血漿を除く必要がありません。

血漿中に抗A抗体、抗B抗体のいずれをも含まないAB型(の血液ドナーから作った)血小板製剤であれば、この問題を手軽に回避できるというわけ。

ただ、AB型血小板は手に入りにくいこともありますし、他に必要な方のために残してあげたい気がします。本来はドナーの血液型の洗浄血小板を使用すべきでしょう。自分の施設で洗浄血小板を作成できなければ、血液センターに相談すれば作成してもらえる場合もあります。

整理すると、次のようになる。

  1. 血小板そのものにはABO式血液型はないと考えて構わない。
  2. しかし血小板製剤には血漿がかなり含まれており、これは供血者の血液型を反映した抗体を持っている。
  3. 頻繁に血小板製剤を投与する場合はマイナーミスマッチが問題になる可能性があるから受血者の型に合わせた方が良い。
  4. 骨髄移植の場合、骨髄ドナーとレシピエント(受血者)のABO式血液型が異なることがあり、骨髄ドナーの血液型に変わりきる前にその型の血小板製剤を投与するとマイナーミスマッチとなる可能性がある。
  5. その場合は血漿を取り除いた血小板(洗浄血小板)を使うが、AB型血小板製剤は抗体を含まないので洗浄血小板の代用となる。

参考にした輸血Q&Aには「本来はドナーの血液型の洗浄血小板を使用すべき」とあるが、洗ってしまうなら血液型は無視して構わないのでは?という点が疑問。微量とは言え血小板にも血液型抗原が存在する場合があるからなのかな。

ちなみにこの問題、昨年に福島県赤十字血液センターで献血した際に軽く考察していた。「血漿中には血液型に応じた抗体が存在するので無視はできないのだろう」は正解。分離した血小板も血漿を含んでいる(それも「かなり」の量)を見落としたのは、名称に惑わされたというか頭が固いというか。そういえば採血基準には「血小板成分献血1回を2回分に換算」とあり、これは「一緒に血漿もいただいてます」ということなのだろうか(約400mL抜かれており、その分散媒は血漿だろう)

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