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2014/06/22

「ゴジラ」鑑賞の妨げ

映画「ゴジラ」(1954)をデジタルリマスターで観た。映画館のスクリーンで見るのはテレビとは大違い。しかしなんとなく不安は覚えていたものの、予想以上に突込みどころが多くて困惑。

志村喬演じる山根博士が原爆と水爆の区別が付いていないようなのは仕方あるまい(専門は古生物学だし)
ジュラ紀を200万年前というのもご愛嬌(wikipediaの「ゴジラ (1954年の映画)」2014年6月7日 (土) 08:10版によれば「香山滋の「原作」からこうなっている」)
山根博士が自宅でも白衣を着ているのも「映画的な嘘」と認めよう、
ゴジラはまだ海中にいるのに山根博士宅で地響きが聞こえる(「ジュラシックパーク」のティラノサウルス登場シーンは、このシーンへのオマージュか)のもゴジラのライトモチーフと納得しよう、
警戒線を越えようとして阻まれ「山根博士だ」と名乗るのも許そう(自分のことを〜博士ということはない)
ゴジラに比べて電車が小さすぎるのも、
海岸沿いに高圧鉄塔があっという間に建ち並ぶのも、
それら鉄塔が赤熱して融けていくのに架線が切れないのも、
海上保安庁の名前は出ても自衛隊の名前は出ない(防衛隊というものが登場する。ちなみに防衛庁も協力したらしい)のも、
日本の安全を保障する名目で駐留するアメリカ軍の姿が一切見えないのも、
戦闘機からのミサイルがことごとく外れているのも、
GMカウンターで人体の汚染を確認しても除染しないのも(救護所では汚染した児童を部外者である山根嬢が無防備に抱き上げる始末)
芹沢研の実験室にテレビがあるのも(当時であれば1台あれば御の字だし、オキシジェン・デストロイヤーを作用させる際には高電圧機械っぽいものを動作させており、テレビを置くには不適切な環境)
応接から階段を降りるから実験室は地階かと思ったら窓から日が差しているのも(崖っぷちに建っているのなら理解できる)
海中のゴジラをGMカウンターで見つけるというのも(ガンマ線といえども数十メートルもの水があれば遮蔽される)
実験室では電気機械が始動して反応を始めたオキシジェン・デストロイヤーが海中ではあっさり〈酸素破壊〉を始めたのも、
パカっと割れたオキシジェン・デストロイヤーの球が中空だったのも、
いつの間にそんな大量のオキシジェン・デストロイヤーを製造したんだというのも、
オキシジェン・デストロイヤーでゴジラ退治に向かう船に、山根嬢が乗り込んでいるのも(そればかりか少年まで乗船している)

みーんな許そうではないか(詳細を詰められなかったので挙げていない疑問点は未だある)。しかし、

最後の山根博士の独白はいただけない。ゴジラが一匹とは限らない、はその通り。核実験を続けるなら、なんで? 即座に核実験を中止しても、今までの実験で生まれたゴジラ(前述の通り一匹とは限らない)は消えたりしない。核実験停止を訴えるために「またゴジラが生まれる」を持ち出したわけだが、実験停止はこれ以上のゴジラ登場を防ぐ必要条件ではあるものの十分条件ではない。これを論理的思考の弱さと決め付けるのには躊躇いを覚えるが、原発を再稼動しなければ脅威はなくなると誤解しているような昨今の反原発運動を見ると残念ながら当たっているようだ(運転を停止した原発も、冷却を続けなければ使用済み核燃料が過熱してメルトダウンを始めかねない)

それと「放射能X」(1953)等の影響もあったのだろうが、放射線を浴びて怪物化というテーマ設定は、後年には「美女と液体人間」(1958)のような被爆者差別すれすれ作品へとグロテスクに変容していくことも見逃せない。この辺りをきちんと正し、放射能の本当の恐ろしさを理解してこなかったことが、2011年の東京電力原発事故後に見られた放射悩狂騒曲の原因ではないだろうか。

とはいえ「戦争はもう真っ平」という思いがひしと伝わってくる名画である。

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コメント

>即座に核実験を中止しても、今までの実験で生まれたゴジラ(前述の通り一匹とは限らない)は消えたりしない。

別に初代ゴジラは水爆実験で生まれた訳では無いし、勿論放射線を浴びて怪物化した訳でも無い(白熱光は後天的なものだが)。
あの個体は水爆実験により住処を失ったことで人間世界に現れた存在であるから、あの台詞は、これ以上刺激してまたゴジラが現れるようなことがあってはいけないということだ。

何でも穿って見るのではなく、少しは辻褄合わせをしてみてはどうだろうか。
その方が粗探しをするよりは幾分か楽しいだろう。

投稿: ヒサルキ | 2014/06/23 00:27

とは言っても、辻褄合わせという名の擁護も出来ないものもあるが、それはまぁご愛嬌ということで。

投稿: ヒサルキ | 2014/06/23 02:30

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