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2013/02/15

『中の人などいない』の人びと

母方の菩提寺が谷中にある。昨秋、祖母の法事に参列した際、日暮里駅の書店で見つけたのが本書。その時は「定収入ないもんね」と買わなかったけれど、心を入れ替え、24日に開く講演会「ふくしまの話を聞こう2」の会場下見をした帰りに、同じリブロecute日暮里店で購入してきた。

ツイッターをやっている、あるいは関心のある人ならNHK_PR(NHK広報局)のことは知っているだろう。「N(中の)H(人など)K(いない)」なんてゆるいツイートで人気を博している。その人が副題「@NHK広報のツイートはなぜゆるい?」という本を出した。


「生協の白石さん」と同じで、NHK_PR(1号)はどんな人?という興味がわくが、実に慎重に伏せられている。オフ会にも出られているというから、会ったことのある人はそれなりにいるのだろうが、読者には謎。もしかすると女性かも、という推測もしているが、テキストから書き手の性別を判断するのは現代では難しい。それでも猫舌なのでウーロン茶をホットとアイスを同時に注文して混ぜてから飲む、なんてツイートを彷彿とさせる行動をされることが分かる。

他にも変わった人達が登場する。12月の後半なのに、「まだ黒いTシャツに黒いジャケットという、大胆なのか季節を間違えたのかわからないような格好」のYさん。「翻訳文のような話し方」をし「高級なスーツを安物に見せかけるという、なかなかマネのできない着こなし術を持つ」Kさん。部下を呼びつけておいて「ほら来た来た。飛んで火に入る夏の虫だな、わははは」と笑う課長。いずれもNHKの中の人で、NHKの印象がガラリと、というかガラガラと音を立てて変わる。

あとがきによれば、これらの人物は事実に基づく創作で、現実の人間と一対一で対応はしていないそうだが、まー、一筋縄ではいかない人達がいることが分かる。その変わり種トップの無機質なKさん(打ち合わせコーナーでのコーヒーを巡るやりとりはまるで漫才)が突然人間味を見せる。

あなたは何も心配をする必要はありません。あなたは正しいことをしたのです

3月11日の東日本大震災に際し、ある中学生が「被災地は停電していてテレビの情報が伝わらないが、スマートホンならネットを見られる」と気づき、NHKのテレビ放送をUstreamに流した(こういう事を咄嗟に思いつき、実行できるのだからデジタルネイティブという呼び名は誇張とは言えない)。これはNHKの著作権を侵害する行為だが、そのことを知らされたNHK_PRは躊躇いながらも拡散する。後に人口に膾炙する「私の独断なので、あとで責任は取ります」は、その時に添えられた(本書によればそんな格好よく大見得を切ったわけではないそうだが)。そしてKさんは、後追いながら手早く正式なネット配信の準備を整えると、広報の用意を指示するとともに上記のように決断を讃えたのだ。

この部分も創作だろうか? それでも構わない。官僚的と言われるNHKの中でも人情は枯れていない、それで十分だ。

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