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2012/10/11

電子学術論文誌の広告戦略

電子書籍(電子雑誌)の広告について、差し替えが可能なこと、閲覧数に応じて料金をかえられることを以前に指摘した(今度こそ来るか電子出版の時代(「電子書籍の衝撃」)」や「(電子)書籍がタダになる可能性」)。

現実は逆で、たとえば「原発事故から1年半で見えてきた放射能汚染の“正体”」を特集した週刊ダイヤモンド(9/15号)の電子版を購入したところ、広告がことごとく白ページになっており、表示エラーと誤認させるような素敵な作りになっている。

その後、東日本大震災に伴う原発事故の影響から門外漢も医学論文などを参照することが増えたのを見て、現在では次のように考えている。

・念頭においていたのはnatureのような学術論文雑誌(学会誌を含む)
・販売は1論文ずつで、それに広告を付随させる
・ダウンロード型でもウェブ閲覧型でも対応
・広告の内容は、利益相反にも注意しつつ
 ・使用した試薬や機器などの広告1)
 ・所属機関の広告
 ・著者本人の広告2)
 ・研究資金の提供を受けた財団などの広告
 ・関連する書籍(プロ向け/入門書)の広告
 ・翻訳サービス3)
 ・競合による「その論文よりこっちを読め」広告4)
・料金は基本掲載料+論文指定料+広告経由での注文歩合
・上記のように論文を指定した広告の他に、場所を指定しない一般広告もある
・IPアドレスによって「関西地方限定」のような地域限定広告も導入
・広告への読者のアクションは原則匿名保護されるが、同意のもとに読者属性を提供もできるようにする(その場合は値引販売が妥当であろう)
・発行後、一定期間経過後は更新(差し替え)自由となる
・キャンペーン終了などの場合は、期間内でも広告主による差し替えを受け入れる
・参照の多い論文は料金を上げ、参照の少ない論文は値下げする
・過去の広告はすべて保存される(フォレンジック)

  1. 競合メーカーが「うちのを使えばもっと効率良くできます」という広告を入れることも。誇大広告でなければ読者にとって有益な情報となる。
  2. 雑誌によっては「著者紹介」がないので、売り込みが必要なポスドクらは自前で用意する必要がある。
  3. オープンアクセスの普及で門外漢でも論文を手に取るのが容易にはなったが、英語では読むのに苦労する。専門家以外にも開かれた科学とは、このような実装によって保証される。
  4. 競争しあっている一方の論文しか読まないと見方が偏ってしまう。「〜に言及していながら*を引用していない論文には、この論文サマリーを表示」という依頼を受け付ける。citation index(CI)を上げたい著者やimpact factor(IF)を上げたい編集者が喜ぶだろう。むろん「相対論は間違っていた」「EM菌が世界を救う」のようなものは審査で排除する(EMにはpeer reviewの論文はないようだが)。

科学者だからといって、科学関係の広告にしか反応しないということはない。岩波の「科学」の表4には東芝EMIやタバスコの広告が載っていた。そこまで極端でなくとも、保育サービスであるとか家事代行サービスは十分に需要があるだろう。

また、広告とは別に、その論文の影響力(CI)や評価、その論文を引用している論文や総説の情報を付帯させることで、利用価値は大幅に高まる。あるいは「この論文を読んでいる人は〜も読んでいます」のようなレコメンド機能。もちろんその論文に引用されている論文・書籍(の本文または書誌情報)へのハイパーリンク、著者の現在の連絡先への連絡フォームなどは必須。

戦略というよりは戦術的な話になってしまった。

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