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2012/09/17

名誉毀損(用語解説)

引用」と並んで誤解が多いと思われるのが「名誉毀損」という用語。知識を整理してみた。

人の名誉を傷つけるようなことを言ったり書いたりすると責任を問われる。責任の追及には刑事と民事の2種類があり、国家(検察)が乗り出してくるのが名誉毀損罪(刑法第230条)。

刑事事件としての名誉毀損



公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。


理解のポイントは、1)公然と 2)事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、 3)その事実の有無にかかわらず、の3つ。

一対一で、他に聞いている人がいなければ何を言っても名誉毀損罪は成立しない。ただし、その時はたまたま他の人に知られなかっただけ、の場合は成立する。また〈放送局〉と仇名のある噂話好きに耳打ちした場合も、たとえ1人に対してであっても、それは容易に広まるわけで、名誉毀損罪は成立する。

事実の摘示がなければ名誉毀損罪にはならない。公衆の面前で「バカ」「恥知らず」と罵倒しても、それだけでは名誉毀損罪にはならない。事実の摘示、たとえば「中学で国語の成績が1だった」「病気の奥さんの代わりに愛人をパーティーに連れて行った」などが必要。なお事実の摘示がない場合、侮辱罪(刑法第231条)にはなりうる。

おそらく一番誤解が多いであろうのが3番目。たとえ本当のことであっても、言ってはいけないことがある。たとえば「彼女は私生児だ」「彼の親は前科者だ」。本当であるならばなおさら、これらを吹聴する行為が咎められるということは理解されよう。なお、本人に責任がある「彼女は父無し子を産んだ」「彼は刑務所帰りだ」も公然と指摘すれば罪に問われる。

一方、歯止めは2つ。まず、この罪は「告訴がなければ公訴を提起することができない。」(刑法第232条)。いわゆる親告罪である(「公訴の提起」とは起訴のこと)。人によって名誉の侵害の受け止め方が違うからであろう。告訴(被害者が検察庁に処罰を求める手続き)が必要なので、被害者かその代理人が積極的に動く必要がある。

また、指摘したのが公共の利害に関する事実についてであり、かつ、その目的が専ら公益を図ることであった場合、真実であることの証明があれば罰せられない。公共の利害に関する事実については特に、起訴されていない犯罪行為が明示されている(検察にしたら、公然と告発するのではなく、そっと告訴告発してもらいたいだろうが)。また公務員または公選の公務員の候補者が対象の場合は、真実であれば罰せられない(公務員としての資質に関係の無い事実であれば、真実であっても処罰されるらしい)

刑法の条文にはないけれど、重要な判例がある。それは、真実ではなかったが真実であると信じる相当の理由がある場合は罰せられないというもの。ただし、これは公共の利害に関する事実について、目的が専ら公益を図ることであった場合限定なので、軽弾みな真似はしないように。

民事事件としての名誉毀損


人の社会的評価を低下させた場合は、不法行為として損害賠償を請求される。また名誉回復のための方策(たとえば謝罪広告)を命じられることもある。

免責については刑事と同じで、公共性・公益性・真実性がそろえば成立しない。真実ではなかったけれど、真実と誤認したことに相当の理由が認められれば成立しないのも同じ。

裁判を起こすというのは一般に敷居の高い行為であるし、公の場で名誉毀損行為が再現されるという難点があるため、いわゆる泣き寝入りになりがちであるが、諦める前に打つ手はある。

正統的な手段は、弁護士を通して抗議文を送る。訴訟を起こすよりも安く済むし、ある程度はこれで解決できる。

弁護士の心当たりがない、費用が負担できないという場合は、無料の法律相談を利用する。といっても、街の物知りとか顔役に依頼するのではない。法テラスはそのための組織。勝訴の見込みがあれば弁護士の紹介や訴訟費用の立替もしてくれる。また弁護士会や行政が主催する法律相談会もある。ADR(裁判外紛争解決手続)という裁判とは別の手続きもあり、費用が少なくて済む。

少額訴訟の場合は簡易裁判所に、代理人(弁護士)を立てずに本人訴訟を提起するという手もある。これも簡易裁判所に行けば相談に乗ってくれる。

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