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2011/12/10

『麦わら帽子』を使った国語の問題

先日、ある出版社の求人に応募したところ、課題が送られてきた。「提出後二週間経っても音沙汰がなかったら諦めろ」という意味の添え書きがあり、提出してから二週間が経過したから不採用のようだ。

課題は三つあり、そのうちの一つは今江祥智の「麦わら帽子」を使って問題を作れというもの。対象は中学受験を予定している小学校五年生。もちろん解答と出題意図も要求されている。

「麦わら帽子」は光村図書の中学一年用の教科書に採用されていたらしい。

以下の問題を作って提出した。今から思えば出題文をググって、いくつかヒットする教材研究を研究して、手堅い4題+個性的1題で臨めば良かった。

一番の失点(出す前から分かっていた)は、「マキの言いたいことばは、ぐっしょりぬれた麦わら帽子をだきしめる、か細い腕が語っていた......」を無視したこと。ここは「言いたいことばは何ですか?」と出題しなければ嘘だろう。しかし手元のメモには「ありきたりすぎる」と傲慢な一言。

提出した問題と解答および出題意図


問一

マキが島に残った理由としてもっともふさわしいものを記号で選んで答えなさい。

 ア 貝がらひろいよりカモメと遊ぶほうが面白そうだから
 イ カモメを捕まえて帰れば自慢できるから
 ウ 兄ちゃとけんかをしたから
 エ 飛べないカモメが心配だったから
 オ 麦わら帽子をかぶれるならどこでもかまわなかったから

【解答】エ
【解説】「おまえの傷のことを心配してのこってやったのに」とあるのでエが正解。ア、イは的外れ。ウは島に残ると言いはったのが先なので逆。大きな無人島に行く動機がない点はあっているが主たる理由はカモメにある。
【出題意図】明示的に書かれていることを読み取れるかを見る(難易度低)。

問二

傍線「小島は海に、おぼれはじめる」とありますが、島は沈むことはあってもおぼれることはありません。ここは大変さを強調するためにわざと「おぼれる(=死ぬ)」ということばをつかっています。同じように、わざと正確ではない強いことばを使っているところを文中から書き出しなさい。(15字)

【解答】日のあつさがあたまを燃やした。
【解説】「あたまを燃やした」は、本当に燃焼しているわけではないが、その熱さを直感できる。一方「か細い腕が語って」は「おぼれる」「燃える」に比べると地味で感覚的な訴えが弱い。
【出題意図】比喩と題意を理解しているかを見る(難易度高)。当初は「山が怒る」のような表現を作らせようと考えたが、それではあまりに易しいし、奇抜な答案(「答案用紙が解答を拒んだ」)が出た際に採点が難しいので、文中からの探索型にした。

問三

マキとカモメを小舟に引き上げた兄ちゃが口をきけなかった理由は「うっかり忘れて」しまった後ろめたさ以外にもあります。それが分かるところを文中から書きだしなさい。(15文字以内)

【解答】舟をまっすぐにとばせてくる
【解説】舟は通常「とばす」とは表現しない。これは島の場所が分からなくなり焦っていた兄ちゃたちが、カモメに気づいて必死に漕いできたことを示している。口がきけなかった理由には疲労も考えられるが、それ以上に恐怖(おぼれさせてしまったか)とその反動としての安堵が大きいと考えられる。
【出題意図】舟に対する「まっすぐにとばせて」という特異な表現に気付けば易しい(難易度中)。理由(恐怖と安堵)を書かせるのは5年生には重すぎると判断して割愛。

問四

マキが麦わら帽子を浜で「おおいばり」でかぶって歩いた理由としてもっともふさわしいものを選び記号で答えなさい。

 ア カモメを助けたことをとくいに思っているから
 イ 自分が大人びて見えるから
 ウ カモメがおとなしく入った帽子をかぶっているから
 エ カモメが犬みたいにつきまとって飛ぶから
 オ 形がくずれ、色もおちて古びた漁村の海辺でかぶるのに似合いになったから

【解答】エ(カモメが犬みたいにつきまとって飛ぶ帽子だから)
【解説】「それがとくいだったのだ」とあるので「それ」つまりエが正解。マキがもう少し大人であれば「冒険の勲章」として形のくずれた帽子自体を誇らしく思うだろうが、まだ早いからアではない(カモメが慕ってこなければただの残念な帽子)。イは往きの舟での話(なお初めの「おおいばり」は後の「おおいばり」とは異なり、「誰にも文句は言わせない」という意味)。ウはもっともふさわしいとは言えない。オはひねりすぎ。
【出題意図】もらったときはおしゃれだから気に入っていた帽子が、形がくずれ色落ちしても気に入っている理由を理解できるか(難易度中)。マキの年齢が推測でき「犬みたいにつきまとって飛ぶカモメ」が助けたカモメと分かれば易しい。

問五

兄ちゃは大人の付き添いなしで舟を出すことが許される大人びた少年ですが、ウニ取りにむちゅうになってマキのことを忘れてしまうような子どもっぽいところもあります。兄ちゃの子どもっぽさが現れているところをもうひとつ書きなさい。(30字以内)

【解答】しぶい顔で兄ちゃはふくれ、マキをのこして舟を出した。/勝手にすっとええわと言ってマキをのこして舟を出した。
【解説】マキをのこして舟を出したところがそうだが、それだけでは不十分。大人ならばたとえば「帰りに迎えに寄るから」と穏やかに別れられる。感情的になって兄としてマキを守らなければならない立場を忘れてしまったことが重要。
【出題意図】日常生活体験だけでは「勝手にしろ」が許されないことは理解しづらい。しかし受験生は兄ちゃと同年代であるから、事件の責任が兄ちゃにあることを読み取れてよい(兄ちゃは「口がきけず」「まぶしくて見ることができな」いことで責任を感じたと分かる)。得点差が出ることを意図して出題(難易度高)。

作ったけれど提出しなかった問題


小島は「岩山の先っちょだけのこして」いるはずなのに「海が、おへそまであがって」きたのはどうしてか、は一読した時点で気になった。「作者の勘違い」以外に合理的な解答も一つ思いついたけれど、どう考えても小学生相手の国語の問題ではないので割愛した。

複数回出てくる「まぶしい」「おおいばり」の意味の違いを問うのも止めた(問四に吸収)。

頻出する「......」は説明の省略と場面転換の二通りの使い方があるので、それを問うことも考えた。

石原千秋の『秘伝中学入試国語読解法秘伝』に知恵を借りて、「この話を要約したらどれが正解か」も考えたが、正解以外の選択肢で遊んでいるうちに正解を作れなくなってしまった。www

動物を助けて恩返しされる話
あぶない目にあってきょうだいの仲が良くなる話
兄の注意を聞かないとあぶないという話
もらった帽子がぶかぶかになってしまった話
カモメを守るためにお気に入りの帽子をダメにしたけれど平気な話

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