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2011/08/09

噛み合わない質疑

専門家が答える暮らしの放射線Q&Aというサイトがある。東電福島第一原子力発電所の事故で人々が抱いた放射線への疑問・不安に対して日本保健物理学会の会員を中心とした有志が答えている。

非常に精力的に回答されているのであるが、どうも空回りをしている観もある。

先日イベントの為に東京の下北沢に行ったのですが、西日本にある自宅に帰ってから友達に言われて心配になり、世田谷区内の町中の放射線量を調べたら、私が行った日は0.48μsvもありました。

その日は6時間ぐらい外に居たのですが私も関東の人達みたいに被ばくした可能性はありますか。

多分通った公園とかならもっと高いと思います。親や友達からは、放射能が溜まってるから髪を切れとか病院で検査して来いとまで言われたんですがその必要はありますか。

あと東京とかは観光やお金の為に情報を隠している可能性はありませんか。
ホットスポットと公表しているのは1都2県の田舎地域だけだけど、東京で計測してる人達のを調べたら、公園や学校以外でも、町で普通にホットスポットや福島ぐらいの凄い数値がどんどん出てます。

都が発表してるのと全然違うじゃないですか。はっきり言ってすごく腹が立ってるし本当のことを知ってたら東京なんて絶対行きませんでした。

この問いには3つの質問が含まれる。

1.私も関東の人達みたいに被ばくした可能性はありますか。
2.放射能が溜まってるから髪を切れとか病院で検査して来いとまで言われたんですがその必要はありますか。
3.東京とかは観光やお金の為に情報を隠している可能性はありませんか。
3-1.東京で計測してる人達のを調べたら、都が発表してるのと全然違う(東京都は意図的に低い数値を発表していないか)。

ところが回答はというと、
関東の人のように被ばくしたというのは行き過ぎた質問だ
関西の方が関東よりも、外部から受ける放射線量は1年間当たりおよそ0.3~0.5ミリシーベルトも高い
全食物から摂取する内部被ばく線量は1年で0.8 mSv程度と評価されている

そして「これらの量と比較した上で、危ないかどうかを判断して頂ければと思います」。これは「あなたは被曝の危険性を過大評価している」と言っているに等しい。

さらに続けて、聞きかじりではなく体系的な知識の習得を薦め、大学か専門学校の教科書レベルの専門書を読むか、聴講生などで大学で学び直せとまで書いている。

行間から回答者の苛立ちが伝わってくるけれど、おそらくこの〈回答〉では納得は得られないのではないかと危惧する。

まずもって、質問に答えていない

仮に私が回答者ならば、
私も関東の人達みたいに被ばくした可能性はありますか。
いいえ。西日本は一般的に関東よりも自然放射能が高いので、東京にいることで被曝量は低下したと推定されます。

放射能が溜まってるから髪を切れとか病院で検査して来いとまで言われたんですがその必要はありますか。
ありません。身体についた放射性のチリなどは洗髪・入浴などで落とすことができます。親御さんやお友達と一緒に、味噌汁で顔を洗うことをお薦めします。なお、側溝の泥などをなめたりした場合は内部被曝の可能性はありますが、泥をなめたのが東京滞在中に限られるのでしたら、野菜と水を多めに取る生活を続ければ放射性セシウムがあったとしてもじきに体外に排出されるでしょう。

東京とかは観光やお金の為に情報を隠している可能性はありませんか。
→東京都が公表している線量は実際に計ったものより意図的に低くされているということはないでしょう。そんなことをすると、仮に低線量被曝による健康への影響が発見された場合、実際よりも低い線量で影響が出たように見えてしまうからです。
逆に言うと、不正確な計測や何らかの思惑を持って実際よりも高い数値を公表する人たちは、「××ミリシーベルトまでは影響が出ない」という目安を作る際、その値を不当に上げてしまいかねない行為をしていると言えます。(本当は50mSvだから何の影響も見いだせなかったのに、「ホットスポットで100mSvだ」と騒いでいたために、「100mSvでも影響はない」という誤った結論に...もちろん国や国際機関は怪しい民間計測の数値を取り入れたりはしないでしょうが)
なお、公表されているのは普通空間線量といわれる、γ線の値です。これは気温を測定するときに風通しの良い日陰の温度計で計るのと似ています。日なたに置いた自動車の中やボンネットを計って「60℃だ、80℃だ」と騒いでも、その日の最高気温とはみなされません。


そもそも、この質問者は本当に被曝のことを心配しているのだろうか。本当に心配しているならば、被曝した場合、健康障害を防ぐにはどうしたら良いか?という質問にならないか。ところが質問者は、親や有人から「髪を切れ」「病院へ行け」という助言を受けながら、これに従いたくない風に見て取れる(「必要ありますか」と否定を期待するような聞き方)。

もう一度質問を見てみよう。最後の「本当のことを知ってたら東京なんて絶対行きませんでした」に尽きるようだ。「本当のこと」をどうやって知ったのか分からないが、とにかく質問者の中には怒りが渦巻いている。

こういう場合は、持ち出されている疑問もどきに回答しても納得される期待は薄い。質問に見えるのはただの思いつき。いわゆる〈でもでもだって病〉の疑いがある。

また放射線に対して漠とした不安は抱えているようだが、それを理詰めで否定されても気分は晴れない。

たぶん、「下北沢のイベントは楽しかったですか。行って良かったですね。」から始めないと通用しないのではないか。ほとんどカウンセリング。実に面倒臭い手がかかる

面倒臭いからここは、「少々神経過敏になられているようです。有馬温泉にでも行って静養されてはいかがでしょうか。」と答えるのがベストだろうか? (関西原子力懇談会のサイトにある温泉から放射線を見ると三朝温泉や池田鉱泉もいいかもしれない。東日本の人なら増富鉱泉で決まり。)

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