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2011/06/15

放射能の呪い

611ガイガーカウンターミーティングについて書こうとすると、どうも私は「分からないことに大騒ぎしてもしょうがないでしょ」的になってしまう。そこで、それはしばらく寝かせることにして、書きながら気がついた〈放射能の呪い〉について先に。

放射能の呪い〉とは、科学的な事実とは離れて、市民の間に定着してしまった放射能のイメージのこと。

放射能は魔法なのか


あまり詳しくはないけれど、映画を例に見てみよう。まずはアメリカ映画「放射能X」(1954)。これは核実験による放射線の影響で巨大化したアリが人間を襲うというパニック映画。巨大化したからってアリが人を襲うとは限らないんですけどね。それも放射能の影響?

続いて言わずと知れた「ゴジラ」(1954)およびそのシリーズ。これも核実験の影響を受けた生物が人間を襲うという設定。映画ごとに設定が異なるが、核実験による放射線の影響で巨大化し、かつ口から炎を吐くようになったという点は共通。口から出ている炎は放射線なのか放射性物質なのかはSFファンなら一度は論じたことがあるのでは? ちなみに当時は「放射能を吐く」と言われていたと記憶するが、activityを吐くというのは実に謎。もしかするとゴジラが吐いていたのはなのだろうか!? このように放射能は理屈の介入を許さない、摩訶不思議なマジックワードになっている。

わからない人のための解説:放射能とは放射線を出す性質のこと、放射線を出す物質(=放射能を持つ物質)が放射性物質、放射線とは放射性物質から出てくる電磁波や粒子線。この説明が円環を形成していることに気づいた人はえらい! 一般には放射能は放射線と放射性物質の両義で使われていた。しかし311東京電力原子力発電所事故以来、政府は放射能という言葉を使わず、正しく使い分けているようだ。

アメリカに戻って「戦慄!プルトニウム人間」(1957)およびその続編「巨人獣」(1958)。放射能Xやゴジラから一歩進み、〈放射能〉は人間に直接の悪さをするようになる。放射線を浴びた人間が巨大化して暴れだすのだ。

基本的なことだが、放射線を浴びて起きる突然変異は次世代以降にしか現れない。その点でもこれら〈巨大化〉はおかしい。

最後にちょっと変わったところで「美女と液体人間」(1958)。これは第五福竜丸事件をモチーフにしていると考えられるが、いま思うととんでもない差別映画。水爆実験で被曝した漁船員が、その影響で液体化し人間を襲うようになるという怪奇映画。最後は警察に追いつめられて皆殺しにされてしまう。漁船員は本来被害者であるのに、いつの間にか加害者、しかも化け物扱い。安部公房は、液体化させられてしまった漁船員の視点で作るべきだったと批判している(wikipediaにも「劇中に液体人間の視点からの描写はなく」とある)。それはともかくとして、この映画で放射能は怖いという思いを強くした人も多いのではないか。古い映画ではあるがテレビでも放映されていた。

以上4つはいずれも核実験による放射能汚染をモチーフにしている。核戦争に対する恐怖心を持たせたいという意図があったのかもしれない(たぶんそうだろう)が、正確さを犠牲にして恐怖ばかりを煽るこの手法が、結果として核に対する理解を妨げてしまったのではないだろうか? 

もちろん核兵器を〈強力な爆弾〉としか描かない脳天気な映画が溢れる中でよく頑張ったといえなくもないが。

最近はマジックワードの地位をDNAに奪われてしまったようだが、それでも新しいところでは、核兵器ではないけれどγ線(放射線の一種)によって人が怪物化してしまう「ハルク」(2003)がある。

映画ではないが、放射能が魔法と同等に扱われている例としてiMacやiBookにバンドルされていたゲームOtto Maticが挙げられる。このゲームには三角フラスコに入った緑色の液体を飲むと巨大化するという設定がある(レベル6)。解説を見るとDrink radioactive potions to grow to 50ft tall!(放射能を一服すると身長50フィート=約15mに巨大化)と。ちなみに巨大化するのは生物ではなくてロボット! 舞台設定が1957年なので取り入れたのかもしれないが...このおかしさは「南無阿弥陀仏を唱えると身体が大きくなって銃で撃たれても傷つかない」に等しい。

放射能の呪い


放射能の呪い〉、それは科学で扱うべきものが魔法の世界に送り込まれてしまった、つまり放射能にかけられた呪い。

そう考えると被曝者や被曝を疑われた東日本大震災避難民への不当な扱い、風評被害、奇想天外な様々な流言も理解できる。科学的につじつまの合わない行動をして平然としていられるのは科学の対象とは思っていないから。

この呪いを解くことはできるだろうか? 忌み嫌われた結核やハンセン病(これも相矛盾する〈遺伝と伝染〉が患者を差別するのに都合よく使い分けられていて、遺伝学や感染症学は出る幕がない...)への露骨な差別が影を潜めたのは、病気自体が制圧されて〈恐ろしさのリアリティ〉を失ったからだろう。残念ながら放射線障害はまだ出てもいない状態でこれだから、〈恐くない〉は無力だろう。

一所懸命に〈放射線ホルミシス仮説〉を強調している向きもあるが、パーティントン夫人のモップの観がある。セシウムなら◯◯温泉にある!と叫んだら、◯◯温泉に閑古鳥が鳴きかねない。(◯◯温泉は日本有数の名泉だが、影響が出ると悪いから敢えて名を伏す。なにしろ療養地として有名だったガラパリ(記事ではグアラパリ)も「フクシマより放射線量が多い」と報道されてから客足が遠のいてしまったそうだから。)

また強い放射線を不用意に浴びれば有害なのだから、〈恐くない〉は好ましくない。適切に用心し、かつ過剰には怖がらないバランスが要求される。

呪いは解けるか


いま恐れられているのは放射能ではなく、放射能に一見似てはいるが実は別物の〈呪われた放射能〉だというのが私の仮説。だから放射線についての知識を増しただけでは恐怖から解放されることはないのではないか。なにしろ現在の知識では〈よくは分からない〉ことも多々あるし。

知識の外部注入は説得であって、納得をもたらすとは限らない。

してみると、線量計を手にして継続してあちこちを測ってみるというのは、本当の放射能を理解する良い方法と言えるかもしれない。初めのうちこそ大騒ぎをするかもしれないが、何日か経てば落ち着くのではないか。危険を煽りたい人は〈正常性のバイアスだァ〉と言うかもしれないが。

「もし女子高生が線量計を手にしたら」はターゲットが異なりすぎるから、「ひとりでできるもん!(放射線測定編)」とか「はじめての線量測定」あるいは「できるかな(放射線測定編)」や「しまじろうと一緒に放射線測定」のようなビデオを作って、子供と一緒に見ていただくのが効果的か。最終的に無頓着なお父さんは子供からも叱られるわけだが。「お父さん、タバコからはα線が出てるよ!」とかね(子供がα線線源を検出できるようなら希望はある)。

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