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2011/06/13

NIIオープンハウス2011

国立情報学研究所の一般公開NIIオープンハウスへ2日に行ってきた。

国立情報学研究所の入り口。オープンハウスと書かれた横断幕。

お目当ては基調講演の「不可能立体と不可能モーション-錯覚から見えてくる「見る」ことの偉大さと危うさ-」と「ネット時代の世論形成」そして行き掛けの駄賃で市民講座「医療を支えるセンサーネット-健康を見守る最前線のセンサー技術とは?」

「不可能...」は錯視を利用してありえないような立体を作ること。そこに動きを加えることでありえなさを際立たせるのが立体モーション。

百聞は一見にしかずで代表作(第6回ベスト錯覚コンテスト優勝作)「何でも吸引四方向滑り台」(反重力滑り台)を見てほしい。種明かしをされてもなおありえない光景が眼前に展開される。

(このコンテストは、予選こそピアレビューによるが本選は観客の投票によるお祭りで、杉原厚吉教授は客受けを考えてコスプレでプレゼンするなど大いに楽しまれたそうだ。そんな受賞だがNature電子版に掲載されたために研究予算を取りやすかった、とやや誇張気味に語られた。ちなみに連続優勝を狙った第7回はあっさり予選落ち。)

これは図形をコンピュータに理解させる研究の副産物だという。理解度を試すためにいろいろな図形を見せる中に不可能立体の投影図を入れておいたところ、〈そのような立体は存在しない〉という結果が出ると思ったらあっさり受容する。調べてみると、人間は思い込みで投影からありえない立体を想像してしまうが、冷静なコンピュータは数学的条件を満たす立体を構築できていた。

過去にも奥行き不連続のトリックや曲面のトリックを使い、ペンローズの三角形のような不可能立体の3次元化は行われてはいた。反重力滑り台はそれらとは異なる原理で実現している。そして計算によって同じような不可能立体を作り出すことができる。

それらを実際に製作し、明治大学錯覚美術館としてこの5月から展示している。ただし土曜のみの開館。展示を見る際の注意は、片目で見ること! この制約はスケールを大きくすることで解消できるので、将来は不可能立体建築を実現したいと。

何でも吸引四方向滑り台は柱の長さを誤認させることで成立しているが、柱のないものも作れる。それを発展させたのが落ちないかまぼこ屋根

反重力滑り台のような不可能立体は、モーション(動画)なしにそのありえなさを理解するのは難しい。本筋からは離れるが、ビデオを簡単にネット(やローカルコンピュータ)で閲覧できるようになったことも影響しているのではないだろうか。

次が「ネット時代の世論形成」。小林哲郎助教は東日本大震災を切り口に、ネット上で社会的リアリティ(何を正しいと感じるか)がどのように形成されるかを分析。東電原発事故ではリアリティが共有されなかったと結論づける。その原因としては、ネットユーザーが〈こだまを聞くようなメディア環境〉にあったことを指摘する。

この〈自分の聞きたい情報だけを収集する〉傾向は、検索時代における〈タコツボ化〉として以前から指摘があり、それに対して佐々木俊尚は「それはあり得ない」とキュレーション論を展開しているが、正直納得しているわけではない(『キュレーションの時代』を読まないとならんな)。

ツイッターではフォローする相手によって自分の閲覧するタイムラインが決まるため、自分と似たような人ばかりフォローしていると、そのタイムラインはまさに〈こだまを聞く〉ようになってしまう。ポジティブフィードバックだ。しかし私自身がそうしているように、異なる見解の持ち主をフォローしている人も多いのではないだろうか。(半分は「わー、こんなバカ言ってるよ」と嘲笑し「それにひきかえ私は」と悦に入るためだが)

アメリカの有権者は、このこだまを好んで聞く傾向がより強いという(そういう環境にある)。社会がニッチなイシューで小さくまとまり分断化されると、全体としての意思決定が難しくなる。

とはいえ人はシングルイシューで生きるわけではない。ツイッターでもフォローの基準は、趣味・仕事・地域...と様々だ。そこにタコツボ化を防ぐブリッジの可能性がある...のだろう。

最後の市民講座までは時間があるので発表を見てまわる。「裸眼立体視ディスプレイの研究動向」ではいくつか方法があるということは分かった。気になるのは、元になるデータの作成方法(撮影方法)は共通なのだろうかということ。「言葉が表す「意味」とは何か?」はコンピュータに言葉を理解させる研究(だと思う)。「興味深い研究ですね」が意味するのは純粋な賞賛の場合もあるし、「難しくてワカリマセン」の場合もある。人間でさえ時には間違うのだから難しいだろう。論文のような素直なものなら、同じキーワードを使っていなくても近い研究を見つけ出すなどは比較的容易かもしれない。「協力的な社会を作り出す評判情報とは?」は実にキョウミブカイケンキュウデス。2つの意味において。(^^; またガイドブックには載っていないが、本の連想検索や自炊電子書籍のテキストと外部情報の自動関連付けなど興味深い研究もあった。

それにしても情報研の研究テーマは実に多彩。くらくらすること請け合い。

19時からの「医療を支えるセンサーネット」は、オープンハウスとは独立の市民講座の一環。

演壇前に陣取る文字通訳チームと大型スクリーン

なんと聴覚障害者のために「文字通訳」が用意されている。要約筆記ではなく、ほぼ話した通りのまま文字で表示される。

講師はうっかり医師だと思っていたら、そうではなかった(講師紹介をちゃんと読め)。どうりで喫煙を擁護するわけだ。さすがにそうは言ってもタバコは身体に悪いと認めていたが、肺がんの原因はタバコではない、大半は誤嚥だというのは本当だろうか。帰ってからググッてみたが、そんな話はとんと引っかからない。情報学研究所としてどう考えているのか、とねじ込もうかしら。

閑話休題。iPodやiPhone(あとアンドロイド携帯も)は〈いつも身につけているセンサー〉として機能する。これで血糖値や体重まで計測できたらさらに用途は広がるだろう(でもどうやって?)。

去年はお土産に『情報を力に未来価値を創る』をもらえたが、今年は団扇(冷房を弱めているためもある。片面にはSI接頭辞の大きい方一覧、反対側にはNIIのツイッターアカウント一覧のある竹製)だった。アンケートには「Wi-Fiを開放してほしい」と買ってなことを書いてキーボード用ブラシをもらってきた。

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