« 入試の公正性:ソーシャルカンニングをめぐって | トップページ | 単位をそろえて考えよう 210ベクレル/kgとは »

2011/03/13

リツイートの作法

11日の地震が収まってさほど時間の立たない頃、救出を求めるツイートがリツイート(RT)されてきた。

地震が起きた時、社内サーバールームにいたのだが、ラックが倒壊した。腹部を潰され、血が流れている。痛い、誰か助けてくれ。ドアが変形し、安定した情報が流れるまでは誰も動いてはならない旨が館内放送で流れている。それでは遅すぎる。腕しか動かない、呼吸ができない。助けを呼ぶことができない。

これは大変だと思った。だが救急へ通報しようにも所在地が分からない。そこでプロフィールを見ると東京の人だと判明。同時にすでに救急出動要請がされているなど事態が変わっているかもしれないと前後のツイートを見ると...なんか異様。

落ち着いて文面を読み直すと、まるで下手な小説のようだ。救出を求めるリアリティが感じられない。普通なら「助けて」「私は××(名前)」「会社は××(名称・連絡先)」という情報を盛り込むし、文章ではなくて電報文のようになるだろう。

しかし「もし本当に瀕死の重傷を負った人だったら?」と思うと安易にデマ判定はできない。結局リツイートしてきた人に返信はせず、いたずらではないかという疑念を表明してから精査に移る。

まずプロフィールに書かれている住所。Google で調べると実在する。しかしストリートビューで確認するとサーバルームがあるような建物には見えない。これでは救急出動を要請しようにも、どこへ行ってくれと指示できないではないか。というわけで打ち切り宣言

ところがひょんなことから急展開。別アカウントで冗談だったと明かしているという情報が。調べてみると確かにそのようなツイートが。

だから RT 嫌いなんだよ。お前等どんだけ連鎖させてんの。馬鹿だなー。

プロフィールと見ると同じ住所が〈場所〉に書かれている。速攻で作ったなりすましアカウント、という可能性には考え及ばず同一人物判定。

お前、自分のやったことが分かってるのかと憤慨しつつも、リツイートの履歴(本人宛メンション)を見ると「もう少し考えて行動しろよ」と言いたくなった。

種が明かされてみると、見えなかったことが見えてくる。たとえば最初に見た端末では無理なのだが、端末を変えると件のツイートはウェブから投稿されていることが分かる。倒れたラックの下敷きになってパソコンを操作できるか? たまたまノートパソコンが手元にあって操作できるならメールが使えるではないか。それをいうなら携帯電話を持っているならツイートではなくで通話が先だ。会社の番号ならアドレス帳に入れているもの。あんな長文を打てるなら電話をかけられないはずがない。119なら目をつぶっていても発信できる。

いっそのこと「両腕が潰された」とか「血が目に入って何も見えない」「傷口から心臓が見ている」とか書いておけば「嘘に決まってんだろ」という弁解も成り立ったかもしれない。それでも反論する猛者はいるだろうが。

そうなのだ。こいつがいい歳して子供みたいなイタズラをして度がすぎるというのは当然なのだが、軽率にもリツイートして、後から死んじまえなどと罵っている人たちにも問題があると思っている。

要するにチェーンツイートなのだ。今回は「拡散希望」と本人は書いていない(書いていたらやはり「ネタと分かるでしょ」論を補強)。フォロワーの誰かが真に受けてリツイートし、本人を知らない〈孫フォロワー〉が拡散させてしまったのだろう。どうも本人の意識ではネタ専用(ウソばかりツイート)アカウントで、真に受けられるとは思っていなかった節がある(糸柳のデマツイートまとめ参照)。そうすると誰が最初に持ち出した(元ツイートのアカウント属性を知らない人達の間に広めた)のか。

それはともかく、その後の動きは「Rhマイナスの血液が不足して」とか「ペットショップが倒産して子犬が」とかと同じ展開。すなわち〈自分では直接助けられない人たち〉が〈善意から〉次々とリツイート。

この「血液が不足」はチェーンメールでも有名で、前世紀からいくども流れている。ある時は中に書かれていた病院に問い合わせが殺到し、業務に支障をきたす事態も起きている。

「ペットショップが」の2010年版では連絡先として書かれた実在のペットショップ(無関係)に電話が来て「犬殺しのブリーダー」などと罵倒される事態に。悪いのは早とちりして電話をし、憂さ晴らしなのかなんなのか話も聞かずに怒る人たちですが、広めた人たちにも責任があります。

あ、これについては以前も書いている。

ボタン一つで実行できるリツイートはチェーンメールと親和性が高い。公式リツイートであれば元を削除すると自動的に消えるらしいが、非公式リツイートはいつまでも残りうる。で、2年前に終わった手術用の血液を求めるツイートが【緊急】とか【拡散希望】というタグ付きで広まる次第。

リツイートではなく返信でも、2時間前に質問が出て、1時間前には解答が集まっている問題にドヤ顔で回答して恥ずかしく思ったようなことが何度かある。リツイートや返信には注意が必要。

リツイートと返信の注意



  • リツイートは公式リツイートを原則とする(twjからのお願い

  • 非公式リツイートの公式リツイートは避ける(元の発信日時が分からなくなる)

  • コメントを付ける場合も、先に公式リツイートしておいた方が良い

  • コメント付きリツイートあるいは返信をする前に、後のツイートを確認する(解決済み問題に回答したり、修正済みの誤りの指摘をしたりするのを避けるため)

  • 知人以外の場合はプロフィールや直近のツイートを確認する(botやネタ専用アカウントのことがあるし、リツイートされるのを嫌う人も実在する)

|

« 入試の公正性:ソーシャルカンニングをめぐって | トップページ | 単位をそろえて考えよう 210ベクレル/kgとは »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: リツイートの作法:

« 入試の公正性:ソーシャルカンニングをめぐって | トップページ | 単位をそろえて考えよう 210ベクレル/kgとは »