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2011/02/04

ガス銃メモ

このツイートに「水平撃ち禁止なんて、どこにもコンセンサスはないでしょ」というリプライ(コメント)が付いたので、パパっと調べたことをメモ。

警察が暴徒鎮圧に使う催涙弾は、「催涙ガス器具」と総称され、いわゆるガス弾はガス筒、ガス銃はガス筒発射器と呼ばれる。つまり武器ではないという扱い。しかし火薬を使うこともあり、実務では武器に準じた取り扱いがされている。

すなわち管理責任者を置いて施錠して保管すること、使用は相当な理由のある場合に限られ、また機動隊では部隊指揮官の命令によること、さらに相手方に危害を与えるおそれのある方法での使用は原則禁止であり、使用した場合は警察庁長官に対して報告しなければならない(催涙ガス器具の使用および取扱いに関する訓令 PDF)。

実際、エジプトの例でも分かるように、「ガス弾」の直撃を受けた場合は、最悪死亡することもある。ガスの散布ではなく筒(ガス弾)の直撃による効果を意図した使用は、正当防衛のような場合を除いては許されない(同第3条2項)。

日本でも過去、催涙ガス筒を直撃させる使い方が問題になったことがある。69年の東京大学封鎖解除の際、多数の重傷者が出て国会で取り上げられた。ガス銃で狙撃したのではないかと追及する議員に、そのような命令はないし、そもそも構造上いわゆる水平撃ちは不可能と政府は答弁している。

つまり政府としては、実際にやったかどうかは別にして、ガス銃もとい筒発射器を物理的な破壊手段として用いるのは良くないという認識でいたようだ。なお、封鎖解除では建物内から抵抗する学生を狙う場合、水平にする必要はない。また改良型では水平撃ちは可能になっている。

77年の成田空港建設反対運動では、救護所の防衛隊員が頭を直撃されて死亡した(東山事件)。政府は国会で水平撃ちを否定したが、はっきりと証拠映像・証拠写真が残っており、国家賠償請求訴訟でも「反対派による投石(同士討ち)説」は退けられガス弾直撃が死因と認められた。

ちなみに私は請求を退けた千葉地裁判決が維持されたと勘違いしていた。なるほど、航空科学振興財団の歴史伝承委員会がガス弾直撃説を認めていたわけだ。なお撃った警官は不起訴で付審判請求も退けられたはず(こちらは斎藤銀次郎・松倉豊治の投石説を採用)。

話は戻るが、東山事件の際、ガス銃は斜め45度で撃ち上げるものであり、水平撃ちは禁止されているという説が流れた。水平撃ちが「危害を与えるおそれのある方法」で原則禁止なのは間違いないが、45度で撃ち上げるべしという通達類は見つけることができなかった(ネット検索の限界)。

これは、45度での投射が最大飛距離ということから生じた伝説かもしれない。なお、45度が最大になるのは地表から発射する場合で、立射の場合は40度前後になる。ちなみに警察の運動会には、ガス弾もといガス筒の着地点の正確さを競う競技があるらしい。

もちろん家族や来賓も来ている運動会会場で催涙ガスが出たら大変だから、おそらく模擬弾を使うのであろう。模擬弾はプラスチックの塊で、ガスは出ない。その代わり直撃した際は紙製のP弾などよりもダメージが大きい。報道や国会質疑では「新型ガス弾」と呼ばれていたが、ガスの出ない、現場では破壊専用の弾頭だ。東山薫の頭蓋骨を砕いたのはこの模擬弾と考えられている。

まとめ:いわゆるガス銃(催涙ガス銃)は、本来は催涙ガスを撒くためのもので、建前としては弾頭の破壊(殺傷)力は利用しない。ましてガスの出ない模擬弾を現場で使用することはありえない。しかし実際には規制は形骸化しており、小銃的な使い方をされる。それでも日本ではそれは不法行為と認められることはある。

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