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2010/09/26

Inbookを使う

Inbookというサービスがある。書籍の中からお気に入りの部分を140字抽出して共有するサービス。140字なのはツイッターと連動しているから。ツイッターからは書誌情報なども入れるため140字フルには使えないが、あとでログインして追加できる(初めから直接登録し、ツイッターに流すことも可能)。

ネット上に自分が読んで気に入った本のリストができる点ではメディアマーカーに似ているが、こちらには本の交換機能などはない。Inbookには次のような機能がある。


  • 1冊の本から何か所でも気に入った部分を140字抽出(引用と呼んでいる)できる


    • ツイッターから投稿できる


  • すでに引用されている箇所に拍手を送ることができる(拍手の多い箇所は上位3つまで表示される)

  • 引用箇所にコメントを付すことができる

  • 同じ本から引用をしている人のリストが見られる

  • 自分と同じ本を取り上げている人のツイッターアカウントと共通する本の数が分かる

つまり、同じ本が好きな人だけでなく、同じ場所が気に入っている人を見つける機能がある。

(メディアマーカーは利用を躊躇していたが、いま見たところ機能がだいぶ豊富になっているので、併用してみよう。)

なお、amazonで購入のボタンが押された場合はInbookの収入になると理解していたが、自分のアマゾンアフィリエイトIDを持っている場合は、それを登録して自分の収入にすることもできることが分かった。どういうビジネスモデルなのだろうか?

取り上げるのは気に入った箇所のみ


Inbookが想定している利用方法は気に入ったセリフを取り上げること。これはツイッターのリツイートと同じ。リツイートも気に入ったツイートをフォロワーに伝える機能。「バカ発見。みんなで石を投げよう」と晒し上げる機能ではない。これは結構重要な点で、バカなツイートを晒して弾劾しても世の中はそんなに良くならない。むしろこちらの性格が悪くなる。

一見迂遠であっても、良いものを広めていく方が王道なのだ。


“引用”の問題点


ところでInbookでは引用と読んでいるが、これは著作権法で複製権が制限される、つまりコピーが許される引用とは言い難い。

著作権法第32条が利用することができると定める引用には3つの条件がある。

  1. 公正な慣行に合致するもの
  2. 報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるもの
  3. 出所の明示

Inbookではアマゾンにリンクしており、ページも入力項目にあるので出所の明示はクリアしている。また1件が140字以内であるから丸ごとコピーの心配はなく、「ここが気に入っている」と好意的紹介であるうえにボタンひとつで元の書籍を購入できることから不当に権利を侵害する恐れも小さい。

問題は報道、批評、研究その他の引用の目的には該当しないこと。引用とはあくまで自分が書いた報道、批評、研究その他の主となる文章があって、それを補強するために行うものだから。名句を書き写して「その通り」と付け加えても引用にはならない。ただの複写だ。著作権が生きていれば、複写をするには著作権者の許可が必要になる。

ちなみに個人のブログに時折見受けられる、ニュースを書き写しただけのもの、1,2行の感想を書き加えただけのものも、引用としては保護されない。

この問題をクリアするには、ブログなどで感想や意見をものし、そことリンクすれば良い。

Inbookでは、レビューを書くのが苦手な人でも好きなセリフを引用するだけでみんなに本を紹介する事ができるとしているが、法律的には好ましくない。しかし本への親しみが増すなら、このくらいの触法は黙認しても構わないと思う。

気になる使い方


気になるのはInbookの使い方を理解していない、あるいは開設者や多くのユーザーとは異なる理解をしているような人の存在。軽いのはいちいち【引用】と入れている人。これは使える文字数を減らすだけで、自業自得だが、文字数をやりくりするためにかなを漢字に替えるなど引用が不正確になるのは困る。引用するためのレファレンスデータベースと考えれば一言一句正確に...孫引きをするのでなければ自分がそうすれば良いだけだが。何を考えているのか分からないのは本の内容を書かない人(Dr.コトーで検索してみてほしい)。わざわざ違反申告をするほどではないが...気に障る。

書誌情報はアマゾンのデータを使っているので間違いは起きにくいのだが、世の中には同名の書籍がある。私が経験した変わった例では、マーケットプレイス(古本)に出品している人がいて、同じ本のデータが2つあったため、ツイッターからの投稿がうまくいかないことがあった。ツイッターからは書名の代わりに13桁のISBNが使えるので、この方が確実。ただしISBNは出版社の自主管理なので重複もない訳ではないらしい。国会図書館が管理する全国書誌番号の方が確実だろう(調べるのは手間だけれど)。

Inbookのサイトで書名検索をして、ツイッターを使わずに直接登録する方法もある。著者と書名だけでなく出版社や発行年にも気を配る人には向いている。しかし旧版は載っていない。ページ数や文言が変わっていることがあるから注意が必要(基本的に新しく買った本だけ登録していれば間違いはないが)。

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コメント

今晩は。お久しぶりです。元気ですか。

私はまあ元気です。忙しくて疲れ気味ですが。

以前連絡したかもしれませんが、ブログをやっています。暇がありましたら覗いてください。

そのうちに新井先生を囲んで飲み会をやりたいです、その節は連絡します。

投稿: 伊藤久雄 | 2010/10/04 19:09

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