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2007/09/24

人を殺したら死刑、の愚

賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶと言います(私に言わせれば経験に学ぶ=痛い目にあわないと分からないのは凡人で、愚者は経験しても学ばない)。

「死刑または無期懲役」しかない犯罪がありました。懲役刑は禁固刑よりも重いという規定に従えば、「死刑または無期禁錮」の内乱罪(刑法77条)よりも重い犯罪です。国家転覆よりも重い罪とは何か? それは親殺し。

君に忠、親に孝を説く社会にあっては、親殺しは大逆罪(主君殺し)に匹敵する大罪というのは分かります。

ですが法の下の平等を説く現代日本ではちょっとまずい。特に、被告人にどれほど酌(く)むべき事情があったとしても3年6か月の実刑を科さなければならない点が争点になった。そして最高裁判所は、尊属殺人重罰規定は憲法に違反して無効という判決を出した(1973年)。

なぜか。酌むべき事情がありすぎた。被害者は被告人の実父。未成年だった娘を強姦し、15年に渡り性的関係を強要し5人も子供を生ませた極悪親父。被告人である娘には刑を軽くする理由が山ほどある(心神耗弱、過剰防衛、自首、情状酌量)一方で、再犯の恐れは微塵もない。それなのに尊属殺人罪を適用すれば刑務所に送らざるを得ないのだ。

判決は14対1の圧倒的多数で、尊属殺人罪の重罰規定を憲法違反と断じた。もっとも内訳を見ると8人の裁判官は、普通の殺人と別扱いする事自体は合憲だが、執行猶予を付けられないような重罰規定は違憲というもの。(ちなみにただ一人合憲を唱えた下田裁判官も、恩赦を使えば下獄させずに済むと主張した。つまり刑務所送りは避けたかったらしい。)

「人を殺したら死刑が当然(酌量軽減は不要)」とか、極端なのに至っては「人を死なせたら死刑(傷害致死も過失致死も殺人罪に統合)」とかいう主張を時々目にする。広いネットで結構目にするのだから、絶滅危惧種ではないでしょう。この人達は上の親殺しの女性も吊るせというのでしょうか。

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コメント

 自分は賢者なわけね
何人殺そうと死刑にならないわけか…
スターリン、ヒトラーでも終身刑で保護されるというわけ?

投稿: へえー | 2007/10/08 00:55

この裁判の話は、1973年の話ですよね。話が極端すぎませんか?あなたは、山口県の母子強姦殺人事件の少年にも理由があるから死刑は愚と言うのでしょうか?あくまでも、被疑者が死に値する様な被害を殺した被害者から受けていたから死刑若しくは重罰は尊属殺人だからといって一概に適用するのはおかしいというなら分かるのですが・・・。表題だけ見ると、死刑廃止を唱えている金儲け主義の似非弁護士の言い分にしか聞こえませんね。あなたも自分の親兄弟や愛する人、子供を殺されたら被害者の気持ちが分かると思いますよ。基本的には、自分以外の人を殺したら同じ様な罰を受けるという基本は外してはいけないと思います。情状を考えていくのが、裁判であればいいと考えます。

投稿: レオン | 2007/10/09 17:28

細川様の事を全く知らずに上記の文面を書いたのですが、まさか・・・。ちょっと恥ずかしい気持ちですが(笑)今の弁護士さんは、本当に弁護士なんでしょうか?ただ被疑者の弁護をするだけ?犯人の唯一の味方?反体制?検事も弁護士も共通の目的、「真実の追究」を忘れている方があまりにも多すぎると私は考えます。何でもかんでも殺人だと精神鑑定やら何やらで時間をかけて、結審するまで何十年もかけて・・・。百歩譲って少年なら分かりますが、どうしようもないヤクザにまで・・。最初の方に書きましたが、犯人の味方?反体制?そんな事よりも、一番考えて欲しいのは、検事も弁護士も被害者の味方でいて欲しい事です。殆どのケースが被害者が弱い立場なのですから。

投稿: レオン | 2007/10/09 18:17

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