LSDで幻覚を見ているアリが作った蟻塚
『ニールセンのアラートボックス』を読んだ。ユーザビリティーの研究者であるニールセンのコラム「Alertbox:Current Issues in Web Usability」の邦訳。
コラムの邦訳はネット上で読める。本書に収められていない最新のものまで無料で読めるのだから、ネットで読むのがお得だが、書籍には書籍の良さがある。第一に精選されている。第二に通勤電車の中で立ったまま読める。
とはいえ、もともとハイパーテキストで書かれたものを紙に移すと隔靴掻痒。本の欄外にURLを書かれても打ち込む気力は出ません。
また、信じがたいことだが、「プルダウンメニュー」と「ドロップダウンメニュー」という、同じものを指す異なる用語が混在している。実はドロップダウンメニューという言い方を知らなくて、疑問を抱えながら読んだのだ。内容からするとプルダウンメニューのようなもの?と思って調べるとその通り。その時は混在しているとは気づかず、ハイパーテキストなら用語解説も簡単なのに、と思った次第。
訳語の不統一はウェブにおいても見られる。どうやら訳者による差らしいのだが、ひょっとすると原文から異なっているかもしれない。原文に当たれば良いのか...
といった瑕疵はあるものの、ウェブを制作する人は(発注する人も)一度は眼を通しておくべきだ。
私が最も感銘を受け、そして痛くなるほど膝を叩きそうになったのは次の一節。
大部分においてウェブはLSDで幻覚を見ている蟻によって作られた蟻塚のようなものだ。多くのサイトが全体像の中では収まりが悪く、期待される標準から外れているため使いにくいのだ。(強調も原文)
奇抜な独創は大概が空疎なもの。六角形の本を出して売れるのは宮武外骨くらいと心得るべきだ。才能があるものは五七五の定型でも独創性を発揮する。才能のないものが破調を気取っても駄作にすらならない。
考えてもみよう。自動車のアクセルとブレーキが車種ごとに左右違っていたらどうなるか。携帯電話のキーをテンキー式にしたり5×2列にしたりして受け入れられるかどうか。ユーザビリティーとはそれ自身が合理的であるとともに、事実上の標準から逸脱していないことも大切、と理解した。だから私はQWERTY配列で文字を打っている。
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