『ウェブ・ユーザビリティルールブック』
ウェブ関係の仕事口を探していて薦められた本。初版2001年だが既に大手書店でもネットでも品切れ状態。アマゾンのマーケットプレイスにて購入。
ネット関係の書籍で5年も経つと大概は古くて役に立たない。もっとも『コンピュータネットワークの政治学』のような例外はある。この本は12年前の発行だが、7年前に読んだ時には十分役に立った(今はどうだろ?)。
本書も登場する主要ブラウザがIE(5.5?)とNN(6?)でFirefoxもOperaもSafariも出て来ないし、解像度は800×600を基準としているし、スタイルシートでレイアウト指定はしないと主張するしと、時代遅れな面はある。もっとも640×480も念頭に置けという注意は、携帯電話でフルブラウザの時代にはまた活きてくるから面白い。
では絶版が妥当な古書かというと、そうではない。今でも悪い例に挙げられたサイトは多い。自己満足な個人サイトはさておき、企業サイトにおいてもみすみす機会損失になる構成のサイトは目立つ。本書の存在価値はまだまだある。
内容はウェブサイトを作る上での常識、みたいなものが多い。というか、見られるサイトを作る上での常識集である。繰り返すが、この常識をわきまえていないサイトはまだまだある。手元に置く必要はないが、常に「このページのユーザビリティは」と意識するためにも一読する価値はある。知っているつもりでも見落としはあるものだから。
参考になったのはウェブライティングに関する事項。それまで薄々感じてはいたが意識化されていなかった「ウェブは可読性が低い」「ユーザは常に次のページを読みたがっている」「斜め読みされる」「概論より特定論、曖昧より明確、抽象より具体的な物を好む」という特徴が明記されていた。
なんとなくウェブは書籍に代わるものと位置づけていたが、なるほど書籍とは受け取られ方が違うのだ。書籍のように扱ってほしければ、現状では印刷を前提とする他はないようだ。
それとリンクの使い方も参考になる。一部のブログに導入されている自動テキストリンクが鬱陶しい訳だ。
参考になるだけに、画面上で読むとプリントアウトで読むより25%遅くなるのを「25%のスピードでしか読めない」と書く(p.143)ようなミスは惜しい。他にもp.162では図で囲む記事を間違えている(ブルームバーグではなく、外国為替の記事を囲む)といったミスがある。
また、当時はスタイルシート(CSS)の実装が不十分なブラウザが多かったのでやむを得ないが、レイアウトにはスタイルシートを使わない、は不満。まして「レイアウトはテーブルで制御すべき」は残念。
表組を使わなくても一行の長さは制御可能です。私はmaxwidthを使っていました。これだと高解像度でウィンドウを広くしても一定幅以上に広がらない反面、画面が狭ければ自動で縮小(折り返し)される。もっともIEは対応していませんが。
「コンテンツのタイトルなどに太字を使うのが一番効果的で一般的」(p.137)...それってH1の役目じゃないでしょうか。
blockquoteをインデント指定に使う(p.139)べきではありません。(これもCSSでレイアウト指定をしないを前提とした苦肉の策でしょうが。)
時代の変化に対応した改定版が望まれます。
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