アックゼロヨン・セミナー「アクセシビリティ」
mixiのWeb Accessibilityコミュニティでの告知を見てアックゼロヨン・セミナー vol.4に参加した。
講演は、ウェブ制作会社(と言っていいのかな?)のミツエーリンクスとWebサイトのアクセシビリティ対応支援のインフォアクシアから。
ウェブのアクセシビリティ(利用しやすさ)はデザインと対立するものと捉えられがちだった。また「それを高めると儲かるの?」という抵抗にも遭ってきた。
生真面目な人は機会損失を減らせるとか説明するが、プロは違う。「儲かるか儲からないかは中身次第」 つまりアクセシビリティがどんなに高くても、つまらない物は読まれないし、悪い品物は売れない、と。全盲の演者は「mixiはアクセシビリティが低いけれど読みに行きます」とまで。まぁ、中身が同じならアクセシビリティを高めておいた方が多くの人に読まれ、商機に恵まれるに落ち着くのだけど、「アクセシビリティ至上主義(これだけやれば十分)」を警戒しているのだろう。
さて、最初はミツエーリンクスのお二人。辻さんは全盲で、スクリーンリーダJAWSを実際に使ってみせた。視覚障害者が聞き取れる速度は晴眼者の3倍程度と読んだ事はあったけれど、実際に高速読み上げモードにされると何を言っているのか皆目見当がつかない。速聴の訓練に使えるかな?
中村さんの話は本家にお願いするとして(追記参照)、感心した点を2,3。
さすがTim Berners-Leeはお見通し。
Opera9のCSS3対応(speech module)は使えそう。
Firefoxに音声読み上げ機能を付加するFire Voxのサイトで、開発者についてを読もうとすると「まだ読んでるの? はよダウンロードしなはれ(意訳)」とあるのに笑った。有償版は英語のリスニングに使えるほどの品質だと言う。
辻さんはしきりに「障害者用に別物を作るな」と強調していた。つまりそれは差別であるという事だろう。それに呼応してフロアの車いすの女性が「それは車いす用トイレに通じる」と指摘。よくわからないけれどなんとなく「なるほど」という感じ(車いす用のトイレを車いすでない人が使うと文句を言う人がいるらしいが、あれは車いすでも使える普通の公衆トイレだそうだ)。
またユーザも努力が必要(音声ブラウザ等の機能を使い倒せ)とは、確かに「読めない、使えない」と拗ねていても事態は改善しないから正論なのだが、これを健常者側が言ったら、やっぱりダメだろうな。
イメージ要素やアンカー要素でのalt属性やtitle属性の使い方は難しい。しかしアイドルの写真だけを載せるサイトで全盲者へのアクセシビリティをどう保証するかと言うフロアからの質問に私は絶句。「なんのために?」 でも見えなくてもアクセスしたいのだろうなぁ。それがファン心理と言うものか。そういえば昭和時代の話になるが、プレイヤーを持ってないのに気に入った歌手のCDを買った事があったっけ。あの時「どうせ再生できないだろ。CDプレーヤーを持ってない貧乏人には売らない」と言われたら傷ついたよな。それはさておき、辻さんは「作り手が写真で伝えたい事を代替テキストに書いてください」と回答(したように思う)。なるほど、杓子定規は良くない訳だ。
インフォアクシアの植木さんは経歴から話し始めた。アレぇ、スタートは大して違わないのにこの差はなんだ。ウェブの魅力に開眼したにもかかわらず田舎道場のうるさ型でくすぶっていたのが失敗であったか。
大規模サイトのリニューアルの話は実践的だった。「あんた達はわかってない、ダメだ」と文句を言うのが目的ではなく、アクセシビリティの高いサイトを作るのが目的。それを見失うとただの小言幸兵衛になってしまう。
最後はパネルディスカッション。パン屑ナビゲーションが否定されたのにはショック。あれを見た時には「これだ!」と思ったものだが。ひょっとしてホームページから辿る事を前提にしていないだろうか。検索エンジンでいきなり奥のページに来た場合、パン屑は大いに役立つと思う(というか、グローバルナビゲーションだと関連情報を探すのは難しい)。
ちなみに私がセットしたのは
ホーム>2つ上の階層>1つ上の階層>ここ
という形式。最後を「今いるのはここ」とすれば紹介されていた"you are here"に通じるだろうか。冒頭に「現在位置:」よりは良いと思うけど。
ホームと言えば、「ホーム」「トップ」などの、当たり前に使われている言葉は通じているだろうかと言う指摘があった。先日、テレビで苦闘するコールセンターの様子を放送していたが、あの話の通じなさっぷりから推して、ホームに戻ってと言われてブラウザのホームボタンを押している感じ。そういえば、何度も書くが我が師匠「阿」は、プログラムと言う言葉を式次第と理解していて、コンピュータプログラムの省略形で使うと話がまるで通じない。支障、プログラマーって司会者だと思ってたんですかぁ?
閑話休題。主催者の森川さんは、昔は使えない奴が悪いで済まされたが、今では自分らの父母も使う時代、爺さん婆さんにわかるよう作っているかと問いかけていた。
最後にアクセシビリティ実現に必要なのは義侠心、とまとめられていたが、もう少しドライでも良いのではないだろうか。
先日の論述試験で提出したウェブの品質管理で、解決策をほとんど「W3Cに準拠した制作」とした妥当性が裏付けられて満足。
追記
辻さんの参加報告が発表されていました。
アクセシビリティに興味のある方は別のセミナーの報告もご覧下さい。
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