通信の秘密侵害に当たるのは
日経のIT Proには「腕試し」というクイズがある。8月29日のお題は「以下のケースのうち,「通信の秘密」を侵害しているとして問題となるのはどれでしょうか」。
四択のうちそれらしいのは冒頭の二つ。
1. プロバイダがネットワークの安定運用の目的で,P2Pファイル共有ソフトの通信を識別してトラフィックを絞るためにパケットの中身を解析すること
2. 企業のネットワーク管理者が情報漏えいを防止するために,従業員の許可なくメールの中身をチェックすること
今春、NTT系ISPのぷららがWinnyの通信を遮断しようとしたところ、総務省から違法である(通信の秘密の侵害に当たる)可能性が高いと指摘されたのは記憶に新しいところ。
というわけで自然、1.を選んでしまったのであるが、正解は2.だという。
調べてみると、ぷららがストップをかけられたのは情報漏洩と流出情報の拡散を防止することを目的としたためで、それは本来の業務ではないと。まして遮断はやり過ぎということらしい。ちなみにぷららは一律全面遮断を止めて申し込み制にすることでクリア。
設問をよく読むと「プロバイダがネットワークの安定運用の目的で,P2Pファイル共有ソフトの通信を識別してトラフィックを絞るためにパケットの中身を解析すること」なので、これはOKだ。しかし解説にはぷららの事例は挙げられていなかった。名前を出す必要はないけど、不親切に感じた。
翻って、企業によるメールの検閲はどうなのか。設問が曖昧だが、メールサーバは企業の管理下にあると考えるのが普通。建前として、業務用のメールシステムにプライバシーは存在しないでしょう。そしてLANは電気通信事業法の対象外。
などと理屈をこねなくても、情報漏洩や不正を防止するのためのメールツールに内容チェックがあるのは常識。もちろん導入に当たっては従業員への事前の説明が望ましいとされているけれど、「許可」をいただくようなことではない。
ISPの@niftyは法人向けサービスの中で、 利用者のメールを全文保存(添付ファイルを含む)し、管理者が閲覧できるメール保存サービスを売りの一つにしている。@nifty.comのメールの秘密は不可侵だけど、@hoge.co.jpのメールは会社(hoge)が管理できますよ、と。まぁ当たり前。
したがって、正解が2.従業員の許可なくメールの中身をチェックすることというのは納得しがたい。まさか従業員が社内で送受信する、個人契約のISPメールを含めているのではないでしょうね(個人のメールを社内で自由に使えるというのも問題だが)。
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