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2006/09/19

落語とPC

先週の土曜日に落語を聞きに行った。大衆割烹の主人が店で開く落語会。最初は開店三十周年記念に向けての企画であったが、好評のため継続して三回目

出演した噺家は、前回は自分の師匠が出ているのでおおよその状況は聞いているだろうが、勝手をつかみ兼ねてか、まくらを「どういう場でも安心な話」で切り出した。児童生徒を相手に郭話はできないし、客を笑うような演目は避けねばならないから。で、それが「三ぼう」、つまり「つんぼ(聾)」「けちん坊(吝嗇)」「どろぼう」ネタ。寄席には来ないか、笑われても表立って抗議はしないから、どこでも気兼ねなく演じられる、と。

ただ、さすがに聾者は落語を楽しまないなんて朗らかな無知は通用しないし、何より「つんぼ」という言葉自体がはばかられる存在。その辺は心得ていて、つんぼの解説の後「ご身内にそういう方がいらっしゃったらお赦しを」と深々と頭を下げる。おいおい,落語も大変だなとやや興ざめしながら聞いていると次がけちん坊。笑うために金を払ったりはしないというのを滑稽に演じてから、この会場にいらしている方はお代を払って−−ほとんど飲食費−−いるから決してケチではないでしょうが、ご身内に...と続ける。最後は泥棒。いくらコケにされても怒るわけにはいかないから安心して笑わせられる。そしてこれも最後に「ご身内に」とやるから会場大笑い。しかも頭の下げ方がだんだん軽くなるのはうまい。

それから演じたのが「だくだく」。ちなみに第一回に出られた桂平治師匠は前座のころ、勝手に「お客がワーと笑ったつもり」と付け足して師匠に怒られたとか。

代わって真打ちが登場して「目黒のさんま」。下げ(落ち)が有名な話は、客が「来るぞ来るぞ」と身構えているから大変だろう。しかし今回は客も大変。生唾を飲み込みながら脂滴る塩焼きを食す演技を見るのは辛かった(親子酒の時の塩辛も垂涎だったなぁ)。

「普段の袴」は煙草ネタ。これはだんだんやり難くなるだろう。最後は「百川」。演目は聞いていなかったのに、その日の午前中にこの話を思い出したのは不思議。これは訛りを題材にしているから、場所柄をわきまえないと通じないばかりか客を不快にさせる可能性も。百川でググると、「この人物の出身ははっきりしません。(中略)本当ははっきりしないと言うよりはっきりさせちゃいけないのです。というのは、田舎物を馬鹿にしております。場所を限定するとその他の県の人たちは面白いかもしれませんが、当事者は面白くありません。」という解説も(誰かと思ったら三遊亭栄楽)。

ところでPCとはパソコンではなくてpolitical correctness。無神経に障害者や特定の職業等を嘲り笑うのは聞き苦しいけれど、毒気を抜きすぎると笑いも死ぬから難しいところ。中には安楽死がふさわしい笑いもあるだろうが、蓋をしてなかった事にしてしまうのもどうかと。

あと考えさせられるのはアナクロニズムの扱い。娯楽なのだから時代考証はほどほどで足りるにしても、あまり時事あるいは現代ネタを盛り込まれると軽い感じが... かといって能のように意味が分からないままかしこまって聞くのも不毛な感じ。「ツァラトゥストラはこう語った」なんて聞くとお子様向けリライトみたいに感じるのに通じるが、所詮はただの衒学趣味かしら。

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