草の乱
映画「草の乱」を観た。感想を書いたのにブログに載せないままでいた。ハードディスクの肥やしにならないよう掘り出した。
秩父事件(困民党ほう起)を、指導部の一人で欠席裁判で死刑を言い渡されながら北海道に逃亡した井上伝蔵の回想という形で描いたもの。
ほう起は緒戦でこそ勝利を収めるが、軍の出動とともに押しまくられ分裂潰走してしまう。政治的に革命を目指す部分が、高利貸し憎しではやる民衆や武装ほう起目的主義的部分を抑えきれず、あるいは見方を変えれば革命のマグマが自由党の政治戦略を乗り越えて噴き出したためと言えよう。まさしく「草の乱」だ。
革命の青写真も不明確だった。30日の猶予があったところで、上州・信州のほう起頼みで、勝利の展望はない。ま、たった7人の敗走ゲリラが政権を奪取できたりするのが革命と言えばそうなのだが、少なくとも映画の中の困民党はビジョンのある山県の敵ではない。
やはり事を起こすに当たっては、終わらせ方をよく考えておく必要がある(「案ずるよりうむが易し」は慎重居士が口にしてこそ意味があり、おっちょこちょいが言っても説得力ゼロ)。
指導部にもましてだめっぷり?を披露したのが最初に戦死した士族殿。あれは実話か。取り入れたのはどういう意味なのだろうか。
指揮系統の混乱も痛かった。困民党軍は厳しい軍律で知られるが、実際の所は大丈夫だったのだろうかと心配にもなる。
ところで当時の農民は「なんば」(手と足が同時に前にでる)で、あんな風には走れなかったと思うのだが。
もひとつところで、総裁田代栄助役の林隆三はキマッテいたが、あの人、私の中では「お荷物小荷物」の三男のイメージが抜けないのよね。
製作:埼玉映画文化協会
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