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2006/01/22

『犬は「びよ」と鳴いていた』

師匠からもらった山口仲美『犬は「びよ」と鳴いていた』を読んだ。以前、「○○という言葉は平安時代に××と読んでいた」というような話を聞き、録音もないのにどうしてそんなことがわかる?と疑問に思った。しかし末子相続のときと同じく納得するまで追究する事なく、権威に寄りかかってしまっていた(いちいち納得するまで調べるのは大変なのだ)。

今回の本はまさに、その疑問に対する答え。ああ、なるほど文献でもわかりますね。辞書(のようなもの)には読み方が書いてある。もっとも「わたしは」と書いて「watasi wa」と読むから油断がならない。だが時代は限定されるものの日葡辞書はローマ字書きだから発音もわかる(ポルトガル人の耳に聞こえた音だが)。さらに伝統芸能。狂言「柿山伏」では台本に犬の鳴きまねをする所に「びよ」と書いてあるという。先日TVでは、実際にびよびよとやっているシーンが映されていた(ただ私も中学の時「柿山伏」は見た筈だが「びよ」は記憶に残っていない)。言葉遊び(p.126)も有力な証拠に。

丹念に調べた様子がうかがえる。その一つとして、今昔物語集を分析して擬音・擬態語53種類を見いだし、過半数が現在にも残っていることを示されている。これは意外。ただ、図3(pp34-35)では長寿をほこっているABAB型でも消えてしまったものがある。語型が多様化した室町を対象にするともっと面白い結果がでるのでは無いだろうか。(全体的に統一性がちょっと、という印象)

一方で、1972年からの30年間に多くの入れ替わりがあったことも示されている。今昔にも書かれなかった短命の擬音擬態語があったことだろう(冒頭、日本語には英語の3倍以上、1200種類あると—近現代限定?—紹介されている)。

なお、こういう研究はテキストが電子化されれば楽にはなるが、目のつけどころが悪かったり方法が不適切だと「パソコンで検索ができるようになったのがそんなに得意かね」と罵られるはめに。後に続く方は気をつけましょう。

第二部は動物の声がどう表記されるかの変遷を追ったもの。なかなか面白いのだが妙な違和感が。たとえばネコが日本にいつからいたか、を『国史大辞典』などに求める。まぁ化石を探す訳にも行かないだろうけれど、なんか妙な感じ。ちなみに飼いならされていない動物は「野生」です。

モモンガの声の探索でそれは頂点に達する。こういうのは国語典ではなく百科典の類いを当たってほしい。最後にようやく「アニマルライフ」などが参照されて落ち着いたが。

「どう聞いて」「どう表現したか」の追究としては著者の方法で正しいとは思うが、私の感覚だと、まず当の動物の声を自分の耳で確認すべきだと思う。あるいは飼育している人に聞いてみるとか。猿の声の表記が変わった原因(p.17)に気づいたのは偶然?

日本人のための擬音語・擬態語辞典はwikitionary式で始められる事をお勧めしたい。

丸田センセ、悪いけど山元大輔先生の方を先に取り上げさせてもらうよ。

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